あ行
- 安全行動
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不安や恐怖などから安全を確保するために行われる行動のこと。短期的には不安を解消することができるが、長期的には不安が増大して逆効果となる特徴があります。外的活動(行為)だけでなく、内的活動(注意や思考する)も含まれるため、意識をそらしたり、別のことを考えたりすること(気そらし)も安全行動(安全確保行動)となります。つまりは、その活動の意味するものが『安全を確保する』『不安を解消する』ことが目的としていれば、安全行動の一種となります。
か行
- 回避
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自分の心や身体にとって、不快な事態が起こらないようにする行動を指します。メリットとしては、一時的な安心感を得られることです。デメリットとしては、その不快な事態に対して苦手意識が強くなったり、意外と大丈夫だったという他の可能性に気づけないことです。
- カタルシス効果
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抑圧されていた感情やストレスを口に出して表現することで、苦痛が緩和され、安心感が得られる効果のこと。自分の気持ちを発散することでスッキリした気持ちになり、ストレス解消や心身の健康に繋がります。つらい体験をしているときは、不安や恐怖を感じすぎないように防衛本能が働く場合もあります。その際に我慢してきた気持ちを自由に解放や表現することで心の安定に繋がるのです。こういったメリットもありますが、トラウマなど必死に抑え込んでいた記憶や感情に気づいてしまって、逆にしんどくなる場合もあります。専門家に相談しながら、少しずつ気持ちを表現していく形が適切な時もあります。
- グラウンディング
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「地に足をつける」という意味で、意識を「今、ここ」の現実にしっかりとつなぎとめるための心理的な手法です。強い不安、恐怖、パニック、過去のトラウマによるフラッシュバック、解離症状(現実感がない感覚)など、圧倒的な感情や思考の渦に飲み込まれそうになった時に、心の安定を取り戻すための応急処置として用いられます。意図的に五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)に刺激を与えたり、意識の焦点を向け直すことで、安全な現実へと心を引き戻します。これにより、感情の渦から抜け出し、冷静さと安心感を取り戻す手助けとなるのです。
- コーピング
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ストレスにうまく対処しようとする思考や努力のことを指します。コーピングは大きく分けて2種類に分類されます。
・問題中心型コーピング:ストレス要因そのものに働きかけて、それ自体を変化させて解決を図ろうとする対処。
・情動中心型コーピング:ストレス要因そのものに働きかけるのではなく、考え方や感じ方を変えて、気持ちを安定させようとする対処。 - 呼吸法
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リラクセーション法の一つ。心と体は繋がっているため、深くゆっくり呼吸をして身体をほぐすことで不安や緊張も和らぐことを狙いとしています。①鼻からゆっくり大きく息を(「1、2、3」と数えて)吸います。②少し止めて(軽く止めて「4」)、③口からゆっくり息を吐きます(口から吐きます「5、6、7、8、9、10」と数えて)。
コツとしては、
①息を吸うのが緊張、吐くのがリラックスです。リラックスしたい時は、吸う息よりも 吐く息を長めにゆっくりと、細く長く吐いていきます。呼吸の長さはご自分のペースで 調節してください。
②息を吐く時にお腹がしぼみ、息を吸う時にお腹が膨らむようにする(腹式呼吸)。
③息を吐く時に「日頃の緊張や疲れ、不安や不満などの嫌な感情が、気持ちよく自分の外に吐き出される」のをイメージしましょう。
さ行
- 自己効力感
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Albert Banduraが提唱した概念で、ある行動を起こす前に「自分はこれだったらできるかも」「やればできる」「なんとかできそうだ」と思う気持ちのことを指します。自分の働きかけが外界に影響を与える事に対する自己評価であり、未来、将来的な確信の程度とも言えます。これは目標を実現するために必要な行動を起こすひとつのきっかけとなります。Banduraは、行動遂行の先行要因として『結果期待』と『効力期待』の2つを挙げています。
・「結果期待」:特定の行動をとったら、こういう結果になるだろうという予測。
・「効力期待」:ある目的を達成するための行動を自分なら上手くできるだろうという予測。
行動を行うかどうかの決定、課題遂行の是非や課題完了に費やす努力と時間を決定する大きな要因であるとしています。 - 心身相関
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心と身体が相互に影響しあい、表裏一体の関係にあることを指します。身体の状態が心に影響を与え、心の状態も身体に影響を与えるという考え方です。たとえば、心にストレスがかかった時に、身体の一部が痛みを感じたり、下痢をしたり、眩暈や頭痛などが起こるといった具合です。また、逆に身体の状態が悪い時は(風邪、大きな病気を抱えているなど)、気持ちが落ち込んだり、不安や焦りなどの心理的な影響を与えます。
- ストレスマネジメント
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ストレスによる心身への悪影響を緩和し、疾病を予防するための活動を指します。ストレス反応が起こる仕組みについて知り、自分自身でストレスをうまくコントロールして、セルフケアをしながら付き合っていくことを目指します。
- スモールステップ
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困難に感じる課題や目標を、小さく、より実行可能な段階に分解し、一つずつ着実に達成していくアプローチを指します。「何から手をつけていいか分からない」「自分にできるだろうか」といったプレッシャーや不安を感じ、行動を先延ばしにしてしまう心理的なハードルを乗り越えるために非常に有効です。また、新しい行動や習慣を獲得したい時などさまざまな場面で有効です。
- セルフアウェアネス
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日本語で「自己認識」や「自己覚知」と訳されます。これは、自分自身の感情、思考、価値観、動機、強み、弱み、そしてそれらが他者にどのような影響を与えているかを、客観的に理解している状態を指します。
単に自分のことを知っているというだけでなく、「なぜそのように感じるのか」「なぜそのように行動するのか」といった内面的なプロセスにまで意識が向いている状態が、セルフアウェアネスが高い状態と言えます。 - セルフ・モニタリング
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Mark_Snyder(1974)は『社会的場面や対人的場面において自分の表出行動や自己呈示をモニターする能力』と定義しています。幅広い意味でも使われており、自分の言動や周囲の状況、行動を客観的に観察したり、文字や日記に書きおこしたりすることで、自分の感情や行動をコントロールし、その結果がどうだったかなど俯瞰してモニタリングする方法です。セルフモニタリングの習慣を身につけることができれば、自分の体調や変化にも気づきやすくなり、自分の行動や思考が悪循環にならないよう軌道修正しやすくなります。
- ソーシャルスキルトレーニング(SST)
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一般的には円滑な人間関係を構築するためのスキルのことを指します。他の人に対する振る舞い方や話し方など、人とうまく関わっていくために必要なスキルとなります。挨拶の仕方、会話の始め方・続け方・終わり方、雑談、謝り方、助けの求め方、振る舞いなど。そういった社会性や社会的スキルを獲得することを目的とした訓練です。
た行
- 適応的完璧主義
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完璧主義は程度によってプラスにもマイナスにも働きます。その中でもプラスの効果が多い特徴を指している概念です。『目標は高いが理にかなっている』『積極的に努力する』『秩序立てて計画的に行動する』『人からの評価を過度には気にしない』などが挙げられます。自尊心が高くて失敗を恐れず、それを糧に成功に向かって前進していく姿勢となります。
な行
は行
- 不適応的完璧主義
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完璧主義は程度によってプラスにもマイナスにも働きます。その中でもマイナスの効果が多い特徴を指している概念です。『高すぎる目標を掲げているのに気付かない』『失敗を過度に恐れる』『失敗によって人から評価されないと不安になる』『自己批判が強い』などが挙げられます。失敗したくない、人からの悪い評価を受けたくないと強く思うことが動機づけとなって完璧主義に傾ている姿勢です。0か100かの思考になりがちで、悪い結果を出したくないために挑戦を回避したり、先延ばし傾向が強くなりやすいです。
ま行
- メラビアンの法則
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Albert Mehrabian(1971)が提唱した法則で、コミュニケーションにおいて、視覚情報が55%、聴覚情報が38%、言語情報が7%のウェイトで影響を与えるというものです。決して、『見た目が重要』という意味ではなく、『人は矛盾した情報を与えられた時に、何を優先して相手の感情や態度を判断するのか?』ということを調査したものです。伝えたいメッセージ内容である言語情報だけでなく、非言語コミュニケーションも一致させることで、相手へ正確にメッセージを伝えられるようになります。たとえば、話を聞く際に、スマホを触りながら相手の話を聞いていたら、「真剣に聞いてくれない」と思われてしまいやすいでしょう。しかし、相手と同じような声のトーンと表情で相槌を打つ姿勢だと、相手には「ちゃんと聞いてもらえている」ということが伝わるでしょう。
- モーニングワーク
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「喪の作業」とも言われ、大事な愛着や依存の対象を失うことによって生じる心理的プロセスを指します。対象は大事な人を指していましたが、健康や名誉、関係性、理想、過去など、その人が大事にしていたものでも同じようなプロセスがあり、広く「対象喪失」として扱われます。グリーフケアや障害受容の文脈でもよく使われます。
モーニングワークのプロセスは提唱者(Kubler RossやCohnなど)によってさまざまですが、①ショックや混乱→②否認や回避→③受け入れざるを得なくなり絶望、抑うつ→④受容、再適応といったプロセスを踏んでいきます。ただし、①~④のプロセスを順に踏んでいくというより、行ったり来たりしながら螺旋状に進んでいくこともあります。
や行
ら行
- レジリエンス
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「回復力」「復元力」「耐久力」「再起力」「弾力」と訳される言葉で、心理学では『困難をしなやかに乗り越え回復する力(精神的回復力)』を意味します。なんでもはね返す硬さというより、竹のように曲がってもすぐ戻る、しなやかさや柔軟性、バネを持った心の状態となります。アメリカ心理学会(American Psychological Association:APA)は、レジリエンスを築く10の方法を提唱しており、①人間関係を構築すること、②危機を乗り越えられない問題として考えないこと、③変えられない状況を受容すること、④目標を立てて、それに向かって進むこと、⑤断固とした行動をとること、⑥自己発見の機会を探すこと、⑦肯定的な視点を涵養すること、⑧長期的な視点を維持すること、⑨希望的な見通しを維持すること、⑩自分自身を大切にすること。
わ行
