

- 子どもが言うことを聞かなくて、ついイライラしてしまう
- パートナーと言い争いばかりで疲れてしまった
- 職場の人間関係がギクシャクして辛い…
誰かとの関係で悩みが生じたとき、私たちはつい「あの人に問題がある」「私の伝え方はいつもダメだ」と、「誰か(個人)」に原因を探してしまいがちです。
そんな時、解決のヒントになるのが家族療法という心理療法です。
「家族」という名前がついていますが、そこで培われた知見やエッセンスは、家族の問題に限らず、職場や学校など「人と人との関わり(人間関係)」があれば、活用できる非常にユニークなアプローチです。
どうしても「誰か(個人)」に原因を求めてしまって解決から抜け出せない際は、問題の解決策がガラリと変わって見えるかもしれません。
※この記事では”家族”を事例に説明していますが、職場の人や学校の人などに置き換えて眺めてみるのも参考になるかと思います。
家族療法は他のアプローチと何が違うのか?
家族療法は心理療法の中でも特殊な形態のアプローチです。
一般的な心理療法やカウンセリングは、来談されているクライエントの内面や気持ち、葛藤などを整理して、自分がどうなりたいか?を目指していくことが多いです。
自分の内面や対処法などクライエント個人に焦点を当てて改善を目指していくものです。
それに対して、
家族療法は、個人に焦点を当てるのではなく、家族それぞれの関係性やコミュニケーションパターンに焦点を当てて、”家族”という一つのグループ対象をシステムとして見なし、そのシステムがバランスよくなるようにアプローチをかけます。




家族療法は、家族全体の関係性がどうバランス良くなるか?を重視するため、関係性の矢印や力関係、誰がどの時にどのように反応してという流れ(文脈)を変えていくアプローチが多いんだ
「原因ー結果」ではなく「円環的」に事象を捉える
多くの心理療法やカウンセリングでは、「原因ー結果」(直線的)で事象を捉えることが多いものです。
- 考え方の偏り → ストレスを溜めやすい
- 過去の親子関係の葛藤 → 現在の対人関係に影響
- 過去のトラウマの記憶 → 現在もフラッシュバック
このアプローチが有効なことも多いため、今もさまざまな心理療法やカウンセリングは支持されています。
一方で家族療法は円環的に事象を捉えます。
たとえば、喧嘩も「卓球」と同じように考えてください。
どっちが最初にサーブを打ったか(原因)は、実は重要ではありません。
- 夫がお酒を飲む(スマッシュ!)
- 妻がガミガミ怒る(打ち返す!)
- 夫がストレスでまた飲む(さらに強く打ち返す!)
家族療法では、「どっちが悪いか」ではなく、「二人の間でどんなラリー(悪循環)が続いているか」だけに注目します。
なぜなら、ラリーの打ち方を一人が変えるだけで、試合の流れはガラリと変わるからです。
バランスと症状との関係について
「家族のバランス」をとるために、誰かが不調になることがあります。
驚くかもしれませんが、ご家族の誰か(たとえばお子さん)の不登校や症状は、「これ以上、家族がバラバラにならないためのSOS」として機能していることもあるのです。
たとえば、夫婦仲が悪いときに、子どもが問題を起こすとどうなるでしょう?
夫婦は一時的に休戦して、「子どもの問題」を解決するために協力し合いますよね。
つまり、お子さんは無意識のうちに「家族をつなぎとめる役割(身代わり)」を引き受けてくれているのかもしれません。
この場合、子どもの問題行動を解決するために学校へ行けるようにさせることや、子どもの症状をお薬などで改善するといったことは、本質的な解決方法ではありません。
その問題行動や症状が何のために出現しているのか?といった文脈(コンテクスト)で事象を捉えることが重要です。
家族療法は、個に原因を求めず、それぞれの成員との関係性や相互作用で見るため、ある人が抱えている症状もシステムのバランス(均衡)を維持するために機能していると考えます。




つまり、「今の家族のバランスを保つために、誰かが症状を引き受ける必要があった(症状が機能している)」という逆説的な見方も、家族療法の大きな特徴だよ
事例:不登校の息子と両親
状況:
息子が学校に行けず、家でゲームばかりしている。
直線的(個人の内面)な見方:
息子は怠けている、あるいは心が弱いから学校に行けない(原因=息子)。
システム的・円環的な見方:
- 父は「厳しく指導すべきだ」と言って息子を怒る。
- 息子は父が怖いので萎縮し、部屋にこもる。
- 母は息子がかわいそうになり、「そんなに怒らないで」と父を制止し、息子を慰める。
- 父は母の甘い対応に腹を立て、さらにイライラして息子への当たりが強くなる(あるいは、母に任せて無関心になる)。
- 息子は両親の不和を感じ取り、自分が部屋から出るとまた揉めるので、さらに動けなくなる。
解説:
悲しいことに、「良かれと思って」が裏目に出ています。
- 父は、息子を愛しているからこそ、厳しくします。
- 母は、息子を守りたいからこそ、かばいます。
誰も息子を傷つけようなんて思っていません。全員が「家族を良くしたい」と願っているのです。
それなのに、結果として「父が怒る → 子が萎縮する → 母がかばう → 父がもっと怒る」という不幸なパターンを続けてしまっているのです。




これは、誰かが意図的にやっているわけではなく、それぞれが家族というシステムを守ろうとして、無意識のうちに自然と起きてしまう現象に過ぎない。だから、誰かを犯人探しする必要はないんだ
改善のアプローチ:
家族療法では、誰かを責めるのではなく、この「パターンの悪循環」を変えるためにアプローチします。
たとえば、「母が父のやり方を少し支持してみる(役割を変える)」や「父と息子が二人で過ごす時間を作る(母が引く)」など、いつものパターンの逆を行うことで、システムに変化を起こします。
家族が本来持っている「回復力」を引き出すお手伝いをするのが家族療法なのです。
いかがでしたか?
家族療法とはどういったアプローチかを簡単に説明してきました。
「あの人が原因だ!」「自分の性格や考え方が原因だ!」と個人に問題を帰化するというよりも、夫婦関係や家族全体の関係が上手くいっていない、システムの歯車がうまく回っていないという事象の見方をします。
全体のバランスが上手く機能していない、悪循環と感じる方は家族療法の力を借りるのも有効かと思います。
そして、”家族”療法という名前ではありますが、蓄積された知見や改善方法は”人と人との関係性”や”相互作用”がある場面では、広く活用できる心理療法です。
学校や職場などを関係性のシステムとして捉えると問題解決の幅が広がります。
【応用編】
たとえば、職場ではこんな事象もありえるかもしれませんね。
「部下が自発的に動かない(問題行動や症状)」と悩んでいる場面。
もしかすると、上司である自分が細かく管理しすぎているから、部下が受け身にならざるを得ないという悪循環が起きているのかもしれません。逆に上司が管理しすぎるのは、部下が動かないからという、「どちらが原因とも言えない相互作用」と捉えます。
上司個人の性格のせいではなく、上司に過度な負担がかかっていて、余裕のなさから管理を強めざるを得ない(組織のサポート不足)というシステムの問題かもしれません。
こう視点を変えるだけで、「部下を指導しなきゃ」だけでなく、「自分の関わり方を変えてみよう」や「チームの体制を見直そう」といった、新しい解決策が見えてきます。
どういう悪循環の関係性になっていて、症状を呈している人はどういった文脈で起こっているか?という視点で見ると、個人に原因を追究せずに、関係性として、集団として、組織として改善すべきヒントがいっぱい見つかるかもしれません。
この記事があなたにとって、新しい解決策の一助になれば幸いです。

