激変する世界の中心で―「出産」に伴う夫婦それぞれの限界と見えない重圧―

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「出産」は新しい命の誕生という幸福なイベントですが、臨床心理学において最もメンタルのバランスを崩しやすい超高リスクな移行期です。

周囲からの祝福に包まれる中、当事者たちが地獄のような苦しみを抱え、夫婦関係に深刻な亀裂が入るケース(産後クライシス)は珍しくありません。

なぜこれほど激しいストレスが生じるのか。今回は、女性・男性それぞれが直面する特有の限界と重圧、そして互いの視点を知る必要性について解説します。

目次

女性(母親側)が直面する最大のストレスは、「物理的・生理的な限界」です。

出産直後の女性の身体は、全治数ヶ月の交通事故に遭ったほどの深刻なダメージを負っています。

その状態で、心身の安定を保っていた女性ホルモンが産後数日でほぼゼロへと急落します。

このホルモンの激変は、本人の意志とは無関係に、激しい抑うつや不安を引き起こします。

さらに追い打ちをかけるのが、数時間おきの授乳による24時間体制の「睡眠奪取」です。

人間は、まとまった睡眠を奪われるだけで前頭葉の機能が著しく低下し、情緒不安定や被害妄想に陥るようにできています。

「自分のタイミングでご飯を食べる・トイレに行く」といった基本的人権レベルの自由すら奪われ、社会から隔離されて言葉の通じない乳児と二人きりで過ごす負担は、女性の心を容易に蝕みます。

一方で、男性(父親側)もまた、固有の強い心理的重圧に晒されています。

男性は女性のように妊娠による身体・ホルモンの変化を経験しないため、子どもが産まれた瞬間、生活が激変した妻のスピード感についていけず、戸惑うことが少なくありません。

職場ではこれまで通りの労働を求められながら、家庭に帰れば激変した妻から「当事者意識が足りない」と叱責される日々が続くと、男性は「どこにも自分の居場所がない」という強い孤立感を抱くようになります。

さらに、現代は共働きが主流であるにもかかわらず、「自分が家族を経済的に養わなければならない」という伝統的な大黒柱としてのプレッシャー(父親役割の重圧)を無意識に強く背負い込み、将来への不安からパタニティブルー(産後うつ)を発症する男性も増えています。

男性も産後うつ?と不思議に思われるかもしれません。

厳密に言えば、産前産後のホルモン変化はありませんが、環境の急激な変化によって、大きなストレスがかかり、抑うつ状態(適応障害)になってしまうこともあります。

現代社会には「親ならこれくらいできて当然」という根拠のない完璧な親の神話が根強く残っています。

育児書通りにいかない現実を前に、女性は「自分は母親失格だ」と罪悪感を抱き、男性は「どう動けばいいか分からない」と自信を失っていきます。

この過酷な状況を乗り越えるために必要なのは、育児の技術ではなく「互いの過酷さへの想像力」です。

重要なのは、どちらが大変なのかを競わせることではなく、お互いの大変さを知ることだと言えます。

出産後に夫婦が衝突するのは、お互いの愛情が冷めたからではなく、それぞれが異なる種類の「限界」と戦っているからです。

これらが結果的に子どもを守る最善の選択となります。

とはいえ、辛すぎる状況ではどこにどんな助けを借りたらいいかも分からなくなります。

ストレスがかかると、人間の前頭葉は働きが悪くなりますからね。
そんなときには我々専門家を頼ってください。

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