
- 「また仕事が続かなかった…自分はなんて意志が弱いんだろう」
- 「周りはみんな頑張っているのに、自分だけが社会不適合者なんじゃないか…」
- 「このままでは将来どうなるんだろうって不安で眠れない」
仕事が続かない、うまく適応できないことが続くと、働くことへの自信を失っていきますよね。
特にメンタルヘルスの不調を経験されたことがある方は、頑張って仕事に復帰しても、再発してしまって、つらい思いを繰り返してしまうこともめずらしくありません。
「周りは順調にキャリアを積んでいるのに、自分だけが取り残されていくようだ…」
焦りや孤独を感じている方も多いと思います。
でも、どうか「自分は根性がないからだ」「社会人として失格だ」なんて、結論を急がないでください。
カウンセリングを受けてきた方々の中には、仕事が続かない理由を多角的に理解できたからこそ、自分らしい生き方を見つけた人はたくさんいます。
この記事では、以下について解説します。
- なぜ仕事が「続かない」という悩みが生まれるのか、その原因とは?
- 自己理解を深めることで、無理のない仕事や働き方を見つける具体的な5つのポイント
この記事を読み終える頃には、今まで上手くいかなかった理由がクリアになります。
あなたらしいキャリアを築くための一歩を、ここから踏み出しましょう。
背景にある心理:なぜ仕事が「続かない」という悩みが生まれるのか、その原因とは?
仕事が「続かない」と感じるとき、

「自分の努力が足りないからだ!」
「我慢できない自分が悪い!」
私たちは、つい自分自身を責めてしまいがちです。
でも、少し立ち止まって考えてみてください。
その背景にはもしかしたら、あなただけが持っている個性的な「特性」や、知らず知らずのうちに身につけてしまった「考え方のクセ」が影響しているのかもしれません。
仕事との相性を決める“特性の凸凹”
私たち一人ひとりには、得意なこともあれば、どうしても苦手なこともありますよね。
その得意・苦手の差、つまり「特性の凸凹」が周囲より大きいと、『職場で求められること』と『自分の特性』がうまく噛み合わず、苦しさを生み出しやすくなります。
たとえば、
| 得意 | 苦手 |
|---|---|
| 一つの作業を長時間のめりこめる いろんな人とコミュニケーションを取るのが好き 感性が豊かで、デザインを整えるのが好き | 複数の作業を同時にこなすマルチタスク 静かなオフィスで一日中パソコンに向かう作業は息が詰まる 感受性が豊かすぎて、他の人が気にならないような刺激(音や光、匂いなど)がつらい |
こうした特性の凸凹は、決して「良い」/「悪い」で判断されるものではありません。
ただ、『その特性』と『仕事内容や職場環境』との相性が悪いと、どんなに頑張っても結果を得にくいことが発生しやすいです。
その結果、「自分にはこの仕事は向いていないのかもしれない」と感じやすくなってしまうのです。
【参考サイト】
作業療法士の菅原洋平先生が、脳のタイプによって成果の出来が異なることについて、ビジネスマン向けに分かりやすく説明してくれています(外部リンク)。
「考え方のクセ」による影響
私たちは物事を捉える際に、無意識のうちに特定の「考え方のクセ(認知のクセ)」を持っています。
このクセ自体は問題ないのですが、時として、それが私たちを必要以上に苦しめ、仕事からのプレッシャーを強めたり、逆に仕事への意欲を削いでしまうことがあります。
たとえば、こんなクセはありませんか?
- 白黒思考
-
「白黒ハッキリつけないと気が済まない!」。少しでもミスをしたり、うまくいかないことがあったりすると「大きな失敗をしたから、自分はもうここではやっていけない」「期待に応えられていない」と極端に考えてしまう。
- 過度な一般化
-
「いつもこうなんだから、次もきっと…」。一度仕事で失敗すると、「自分は何をやってもうまくいかない」「前職と同じようにダメな奴だと思われているに違いない」と、一つの出来事を全ての状況に当てはめてしまう。
- マイナス思考のフィルター
-
「良いことよりも、悪いことばかりが目につく…」。上司に褒められたことや達成できた仕事があっても、それらはあまり記憶に残らない。ちょっとした注意やできなかったことばかりが頭の中でぐるぐるしてしまう。
- べき思考
-
「~べきだ」「~ねばならない」と自他を縛りつけてしまう。「お客様の要望には100%応えるべきだ」「上司なのに、なぜ気にかけないのか?(上司なら気にかけるべきだ!)」といった自分ルールで追い詰めてしまったり、周りへの不信感で苦しくなってしまう。
こうした考え方のクセが強過ぎると、知らず知らずのうちにストレスを溜め込んでしまう。
結果として、「もうこの仕事は無理だ」「この職場が合わない!」という気持ちに繋がりやすいのです。
“完璧主義”がもたらす心の疲弊



「どうせやるなら完璧にやりたい!」
「全員から認められたい!」
こういった気持ちは、仕事を頑張る上でのモチベーションになります。
しかし、その「完璧」の基準が高すぎたり、常に100点満点を目指そうとすると、かえって自分自身を苦しめてしまいます。これが「完璧主義」の罠です。
- 0か1かの完璧主義になると、小さなミスも許せず、自他に対して厳しくなる傾向があります。
- 特に不安が高くて、”周りから認められたい”、”他者が自分に対して『完璧を求めている』と捉える気持ちが強い”と、罠にはまりやすいです。
完璧を求めるあまり、時間をかけすぎたり、周りの評価を過剰に気にしてしまうなど、心身ともに疲れ果ててしまうことも少なくありません。
そして、「こんなに頑張っても(完璧に)できないなら、この仕事は自分には向いていないんだ」と、仕事を続ける自信を失ってしまうことにも繋がるのです。
これらの理由は一例ですが、「特性の凸凹」「考え方のクセ」「完璧主義」は、あなたがイコール「ダメな人間」ではありません。
むしろ、実直で、一生懸命で、より良くありたいと願う人ほど、こうした壁にぶつかりやすいです。
大切なのは、これらの個性によって「今の仕事や職場環境と、うまく噛み合っていないだけかも」「今のあなたを少し働きづらくさせているだけかも」という視点を持つことです。
では、これらの個性とどう向き合い、自分らしい働き方を見つけていけばいいのでしょうか。
そのための具体的なステップを見ていきましょう。
自分らしい「働き方」を見つけるための5つの自己理解のステップ
STEP1 「じぶん研究ノート」を作ってみる
- あなたには、他の人にはないユニークな「得意なこと」や、逆に「どうしても苦手でエネルギーを消耗してしまうこと」があるかもしれません。
まずは、自分だけの「研究ノート」を作る感覚で、自分の特性を客観的に書き出してみましょう。 - たとえば、
「集中できる環境は?(人が少ない空間など)」
「集中できない環境は?(強い光や特定の匂いなど)」
「得意な作業は?(標準化された作業など)」
「苦手な作業は?(臨機応変など)」
さまざまな面で書き出してみましょう。
自分の特性を分析せずに、アンマッチな仕事に就くと苦労しやすいです(マルチタスクが苦手なのに、同時作業の多い飲食店で働くと疲弊しやすいなど)。 - 自分の特性を書き出すと、「なぜ今の仕事がしんどいのか?」が見えてきます。
そして、
次の仕事を選ぶ際に「自分に合う環境の条件」が明確になるでしょう。
今の職場でも「こういう許可を得られれば、働きやすくなる」という改善策が見つかるかもしれません。 - これは「できない自分」を責めるのではなく、「自分を活かすための工夫」を探す作業です。
得意・苦手が分かってくると、
環境を慎重に選ぶ
相手にお願いする(お互いの得意不得意な仕事を分担する)
使用許可を得て、ツールで苦手部分を補う(AIツールでメモを代行、聴覚過敏をノイズキャンセリングイヤホンで緩和)
などの対策を講じることができます。
一番は、得意なことを発揮できる職場を選べるといいですが、苦手部分を補える対処法を持っていると様々な職場でも適応しやすくなるでしょう。
一方で、『特性の凸凹の強さ』や『環境から求められるレベルの高さ』によっては、工夫だけでは難しい場合もあります。その時は環境自体を変える方がいいかもしれません。
STEP2 「考え方のクセ」を捉え直す練習
- 私たちは、ある出来事を消化するとき、物事を特定のパターンで捉える「考え方のクセ(認知のクセ)」を持っています。
先述した考え方のクセがでてきたら、
まずは、「あ、またいつもの考え方が出てきたな」と、そのクセに気づくことが第一歩です。
そして、その思考に対して、
「本当にそうか?何を根拠に判断しているのか?」
「他の見方はできないか?」
「もし友達の〇〇さんが同じように悩んでいたら、なんて声をかけるか?」
このように自分の思考と少し距離を置いて、冷静に見つめ直しましょう。
あなたが「捉えた認識」と「実際に起こった事実」のインパクトは、必ずしもイコールではないかもしれません。 - ミスをして「全部ダメだ」と思った時、
「確かにミスはしたけれど、この部分まではできていたし、この経験から次に活かせることもあるかもしれない」と
別の側面を見つける練習をします。
思考のクセはすぐには変わりませんが、気づき、距離を置く練習を続けることで、少しずつ心のしんどさが和らいでいきます。 - この考え方のクセも、「良い」「悪い」で判断されるものではありません。
たとえば、
べき思考が強い人は、責任感が強く、厳格なルールが整っている職場では強みとなるでしょう。
一方で、役割が曖昧だったり、臨機応変にルールを変えていくような職場では苛立ちを感じやすいかもしれません。
(自分の考え方のクセを知りたい方へ)
【参考サイト】認知の偏り測定尺度(Cognitive Bias Scale :CBS)
丹野義彦ら『推論の誤り尺度』TESを参考に作られた尺度です。先読み、べき思考、思いこみ・レッテル貼り、深読み、自己批判、白黒思考の6つの認知のクセをチャートで分析できるテストです。
以下のリンクは外部の参考pdfファイルが開きます。
あなたの考え方チャートをつくってみよう!
※このテストはあくまで自己理解を深めるための参考ツールです。正確な診断や評価には専門家への相談が必要です。
STEP3 完璧主義を緩めていく
- 「完璧にやらなければならない」という思いが強いと、常に緊張感が抜けず、どんなに頑張っても「まだ足りない」と自分を追い詰めてしまいがちです。
これでは、心が疲弊してしまいますよね。
でも、学生の頃と違って、働き始めると白黒ハッキリと結果が出ず、理不尽な評価を受けることも多く、思い描く「完璧」が得られないことはしばしばです。 - 完璧主義『傾向』であれば、常に自分自身を磨いていく前向きな考え方になります(適応的完璧主義と言います)。
一方で、0か1か思考で自分を苦しめてしまうような完璧主義は、自身を燃え尽きさせてしまう可能性が高くなります(不適応的完璧主義と言います)。
そのため、間を取って70点で上出来と思えるくらいの方が長続きする場合もあります。
とはいっても、今までのやり方を急に変えるのは難しいものです。
納得して「70点でもOK」と思えるように少しずつ持っていけるといいでしょう。
新しい認知を整える。
「70点で上出来」と思えるようなメリット・デメリットを挙げてみて、認知を整えるのもいいでしょう(100点を出して疲弊して休むより、70点を安定して出すほうが重宝されるなど)。
2つの目標を作る。
仕事を始める前に、「今日、これだけは絶対に終わらせる(70点のライン)」という最低限の目標と、「もし余力があったらここまでやりたいな(100点のライン)」という理想の目標を分けて設定するのも良い方法です。 - その70点をクリアできたら、しっかり自分を褒めてあげましょう。
完璧ではない自分を許し、「今日はここまでよく頑張ったね」と優しい言葉をかける習慣が、心の余裕を生み出し、結果として仕事の継続にも繋がっていきます。
失敗も、自分が成長するための「学びのチャンス」と捉え直してみましょう。
STEP4 小さな成功体験を集める
- 私たちは、仕事が続かない経験を繰り返すと、自信を失ってしまいがちです。
でも、必ず「できること」や「できたこと」があるはずです。
どんな些細なことでも構いません。
「朝、決めた時間に起きられた」「人に相談することができた」「同じ成果を出すことができた」など、
その日に出来たことを具体的に記録する「出来たこと日記」をつけてみましょう。 - 「これをやってみよう」という目標を立て、それを一つずつクリアしていく経験を積み重ねていくことも大切です。
たとえば、
「今日は会議で一言だけ発言してみる」
「新しいソフトの基本操作を一つだけ覚えてみる」など、
いつもの自分とは違う試みをしてみましょう。 - 厳しく批判的なコーチだけでなく、出来たところもちゃんと評価し、改善するべきことは冷静に分析し、次に生かす前向きなコーチの方が合っている人だっています。
この小さな「できた!」の積み重ねが、「自分もやればできるんだ!」という自己効力感(自分ならできると思える感覚)を育て、それが「自信の貯金箱」を少しずつ満たしていくのです。
STEP5 「自分に合う環境」を探求し続ける勇気
- 今までの自己理解を元に、「今の職場に全てを合わせる」のではなく、「自分の特性や価値観に、よりマッチする環境や働き方を選ぶ」と主体的な視点を持って、情報収集や行動してみましょう。
- 短期派遣や業務委託、副業、ボランティア、興味のある分野の勉強会への参加など、今の生活を変えなくても「お試し」でさまざまな働き方や職場環境を経験してみることは可能です。
- 焦らず、いろいろな選択肢を検討し、
「自分にとって心地よいかもしれない」
「自分の力を活かせるかもしれない」
と感じられる場所を、諦めずに探求し続ける勇気が、あなたを新しい未来へと導いてくれます。 - もちろん、その過程で信頼できる人に相談したり、専門家の意見を聞いたりすることも、とても力になります。
自分の得意不得意が人よりも大きいと感じる場合は、心理検査を実施することでハッキリ見えてくる場合もありますので、心療内科やカウンセリングセンターに相談するのもいいでしょう。
衝動的な転職の前に、一度立ち止まって
仕事が長続きしない、転職してしまうことが悪いわけではありません。
ただ勢いで衝動的に環境を変えるのではなく、何がマッチしていて、アンマッチしていないのか?を冷静に判断してから決めてみてください。
今回の記事が、あなたらしいキャリアを築くための一歩になれればと思います。
そして、このように自己理解は大事ですが、もっと大事なことは一人で抱え込まないことです。
仕事がうまく続かないことで悩んでいる時は、生活に焦りを感じている心境の方が多いと思います。
苦手なことしかなくて、あえて振り返らなかった人もいるかもしれません。
客観的に一人で分析するのは難しいこともあるので、気軽に私たちのような専門家に相談してみてください。
一緒に振り返ることで気づかなかった自分の考え方のクセや得意不得意が見つかることは、カウンセリングでよくある光景です。
もちろん今回お伝えしたこと以外でも仕事が続かない理由もあるでしょう。
カウンセリングでは、人間関係でしんどくなってしまって仕事が続かないことを相談される方も多いです。
その時は以下の参考記事やページもご覧になってください。




あなたは「自分らしい働き方を真剣に模索している人」です。
その探求心こそが、あなただけの未来を切り開く最大の力になります。
- 就職するときには自分は何が得意、不得意なのか?何を大事にして働いているのか?深く考えて職に就いたわけではない方も多いと思います。
働いてみてから、つらい思いや良かったこと等を経験して、初めて見えてくることの方が多いでしょう。 - 今回の記事を機に、一度あなた自身を深く振り返ってみるのはいかがでしょうか?
この「自分を理解する」というプロセスは、仕事だけでなく、日々の生活など、あらゆる場面であなたを支える土台となるでしょう。
もちろん、この「自分を理解する」プロセスは、時に不安になったり、立ち止まったりすることもあるかもしれません。
思い出しても嫌な出来事しか見つからなくて、振り返りたくない人もいるかもしれません。
一人で進むのが難しいと感じたら、私たちが伴走者としてサポートできることを思い出してくださいね。
今日紹介した内容と関連する記事には、以下が参考になりますので、よかったら読んでみて下さい。
①自分の得手不得手や性格が分かる心理検査を知りたいはこちら(「心理検査のカテゴリー」を想定 作成中)
②自分の考え方の癖との付き合い方を整理したい方はこちら(「認知行動療法とは?」)
③特性の凸凹が気になる方はこちら(「発達障害の記事」を想定 作成中)
④自分の『トリセツ(取扱説明書)』を深めたい方はこちら(トリセツの記事 WRAPや復職支援のトリセツを想定 作成中)



