【臨床心理士が解説】心理検査で何が分かるのか?その種類や限界について

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【メインビジュアル】心理検査とは?

みんな大好き心理テスト

現場では『心理検査』と呼ばれています。

さまざまな検査が存在していますが、病院で主に使われる検査はその中でも極々一部のものです。

こちらも病院で使われることはなく、あくまでも日常生活の中での自己理解を助けるツールに留まります。

さて、それでは病院やカウンセリングルームで主に用いられている検査は、どのようなものがあるのでしょうか。

この記事を読んで欲しいひとはこんな人

  • 自分の性格、特徴を知りたい
  • 客観的に自分の傾向を分析したい
  • 心理テスト大好き
  • MBTIですべてを判断してしまいそうになる

ここからの情報は若干読むかどうか注意が必要です!
というのも、検査によっては先入観によって結果に影響が出てしまうのです。
なるべく影響の少ないものから記載していきますので、近々受ける予定がある、受けることを決めた!という方はブラウザバックをお願いします。

今回は何か一つの心理検査についてではなく、心理業界における検査の全般的なご紹介をいたします!

目次

1.心理検査の種類って?

ひとは様々な側面を持っています。

そのため、ひとを知るための検査も色々な方向から、ひとの特徴をつかむために作られ続けています。

そして、心理検査を大きなくくりで分けると以下の3つの種類があります。

  • 人格検査
  • 知能発達検査
  • 認知機能検査

なんだか分かりやすいような?分かりにくいような?

みなさんに馴染みがあるのは①人格検査なのではないでしょうか。

人格とは、一般的な言葉では“性格”と呼ばれています。

かの有名なMBTI(本当の名前は16…以下略)も分類としては①人格検査だよ

②知能発達検査は、知能検査、IQ検査と言えばよくTV番組やYoutubeの企画でも目にします。

一方で、③認知機能検査に至っては、まったく一般的には知られておりません。

こんな感じでそれぞれに個性のある検査達ですので、それぞれの検査の目的や適用例を説明していきます。

日常生活との結びつきも強く、データを直感的に理解しやすいこともあり、最も関心を集めている分野と言えます。

その分、根拠の薄い、あまり結果があてにならないものも数多く世に出回っています。

臨床心理士・公認心理師が用いる心理検査は、統計学に基づいて理論的に確かなものが採用されています。

また、検査の在り方は

が存在しています。

それぞれ、長所と短所があり、検査の目的やクライアントの困りごとに合わせてオーダーメイドに選択されます。

【質問紙】

  • 長所:回答しやすく実施も比較的簡単であり、データも直感的に理解しやすい
  • 短所:何を測られているか予想しやすく、本心で回答しにくくなる

【投映法】

  • 長所:何を測られているか予想がしづらく、真の人格が回答に現れやすい
  • 短所:回答に悩むこともあり、クライアントに負担をかけやすい。データの活用に専門的知識が必要

有名どころは以下の検査

エゴグラム

「心のエネルギーのバランス」をグラフで可視化することで、自己理解や対人関係のパターンを理解でき、人間関係改善に役立つ質問紙の心理検査です。
日本では東大式エゴグラム(TEG)が標準化されており、医療・教育・産業の場で幅広く活用されています。

わかること

  • 自己理解:自分の強み・弱みを客観的に把握できる。
  • 人間関係改善:対人関係のパターンを理解し、円滑なコミュニケーションに役立つ。
  • 臨床・教育・産業分野:心療内科、カウンセリング、企業研修や採用面接など幅広く活用。
  • 簡便性:短時間で実施でき、結果がグラフで視覚的にわかりやすい。

【投影法】

ロールシャッハテスト

「曖昧なインクのしみをどう解釈するか」から、その人の心の働きを探る投影法の心理検査です。
深層心理や無意識の側面を理解するための代表的な投影法であり、臨床心理学や精神医学の現場で補助的に活用されています。

わかること

  • 性格傾向:外向性・内向性、感情の安定性など
  • ストレス時の行動パターン:困難に直面した際の反応の仕方
  • 精神疾患の示唆:統合失調症や抑うつなどの可能性を探る補助的資料
  • 無意識の投影:本人が気づいていない欲求や葛藤が反応に現れる
バウムテスト

一本の木の絵を通してその人の内面世界を探る投影法の心理検査です。
教育現場や臨床心理の場で広く活用され、自己理解やカウンセリングの補助的手段として役立っています。ただし、結果はあくまで参考資料であり、他の検査や面接と併用することが重要です。

わかること

  • パーソナリティ構造(自己像、生命力、対人関係の傾向)
  • 感情状態(不安、抑うつ、安定性)
  • 発達段階や現実適応力
  • 内面に抱える欲求や葛藤

3.知能発達検査って?

実はこちらの検査、もともとは軍人さんの適正、将校への昇進のために開発されました。

優秀な人材をいち早く見つけ出し、国を強くさせるために役立てていたのですね。

また、医療分野にも受け入れられ、発達障害の評価や全般的な脳の働きを測るために活用され、診断や治療の意味合いが高まりました。

その後、教育分野へと発展し、特別支援教育や高IQ向けのギフテッド教育など、特性にあった教育を受けられるように活用されています。

現代においては、教育的な特別支援や医療的な診断に留まらず、得意-不得意を知ることで自分のストレングスを活かし、より良い生活・仕事を作るためのツールとして活躍しています。

有名どころは以下の検査

ウェクスラー式知能発達検査

「IQを測るだけでなく、知能の構成要素を多面的に分析する」世界標準の知能発達検査です。
幼児から成人まで対象年齢に応じた検査があり、教育・臨床・産業の場で幅広く活用されています。
単なるIQ(知能指数)の測定ではなく、知能を構成する複数の能力領域を分析し、得意・不得意を把握する。

利点

  • IQだけでなく、認知能力のバランスを把握できる。
  • 発達障害や学習困難の診断補助資料として有効。
  • 自己理解や教育・職業支援に役立つ。

限界

  • 創造性や芸術的才能などは測定できない。
  • 状況や体調によって結果が変動する可能性がある。
K-ABC-Ⅱ検査(カウフマン式心理・教育アセスメントバッテリー)

子どもの認知能力と学習の成り立ちを多面的に評価し、教育や指導に活用するための心理検査です。
「子どもがどのように考え、学んでいるか」を明らかにする検査で、従来のIQ中心の知能検査とは異なり、認知処理の特徴や学習の習得度を測定できるため、学習障害や教育支援の現場で非常に有用とされています。
対象年齢は、日本版KABC-Ⅱでは 2歳6か月〜18歳11か月。

利点

  • 学習の「結果」だけでなく「過程」を評価できる。
  • 認知能力と基礎学力の両面を測定可能。
  • 教育的支援に直結しやすい。

限界

  • 実施には専門的な資格と訓練が必要。
  • 単独では診断の決定的根拠にならず、他の検査や面接と併用が望ましい。

さて、聞き覚えのない言葉が出てきました。

ちなみに、別名で“神経心理学検査”というさらに聞き覚えのない名前もあります。

こちらは、脳の働きを測る検査の総称です。

積木やカードなどを使ったり、手先や体の動きを用いて様々な課題に取り組んでもらいます。

そのときの様子や得点などから、脳が正常に働いているかどうかを測る検査です。

我々の脳は、考え、感じ、そして自らの行動を制御しており、多数の機能を担っています。

そのため、日常生活とは異なる、限定された場面での反応を見ることで、脳のどの機能・部位の調子が悪いのかを特定することに役立ちます。

有名どころは以下の検査

長谷川式認知症スケール(HDS-R)

日本で広く用いられている認知機能検査で、認知症の有無や程度を簡便に評価するためのスクリーニング検査です。

利点

  • 短時間で簡便に認知機能を評価できる。
  • 日本人に適した質問内容で信頼性が高い。

限界

  • 教育歴や生活習慣による影響を受けやすい。
  • 認知症の診断確定には、他の検査や臨床情報との併用が必要。
ウィスコンシンカードソーティングテスト(WCST)

前頭葉機能を中心とした「遂行機能(実行機能)」を評価する代表的な認知機能検査です。
状況の変化に柔軟に対応できるか、抽象的思考や問題解決能力を測定するために用いられます。

利点

  • 前頭葉機能を直接的に評価できる。
  • 認知症や脳損傷の早期発見に有効。
  • 問題解決能力や柔軟性を測定可能。

限界

  • 実施に時間がかかる(約12〜20分)。
  • 被験者の教育歴や理解力に影響されやすい。

さて、ここまで心理検査について色々なことをお話しました。

ここまで読んでくださった皆様にはもう一つ、知っておいて欲しいことがあります。

それは心理検査の落とし穴とも言える、重要な注意点についてです。

心理検査を行うことで、ある種の数値や自分自身の傾向に対するデータが得られます。

自己理解を深める上で、これらのデータは非常に有用であり、とても役に立ちます。

しかし、データが得られたことで、自分自身の傾向を決めつけたり、未来の自分の可能性を無くしてしまうことには留意が必要です。

心理検査で得られるあなたのデータは、あくまでも回答をしたときの“いま、ここ”のあなたの一部でしかありません。

将来的に数値は変わるかもしれませんし、苦手なことの一つや二つは基本的に持っていることが通常です。

我々はこのことを十分に理解しており、検査の結果をいかに生活に役立て、より良い人生を作っていくかをお手伝いしたいと考えています。

今回の記事はいかがだったでしょうか。

検査に対する正しい知識を少しでもお伝え出来たら幸いです。

また、自分自身を知ることには勇気がいることもあります。

一人で向き合うことが辛いときもあると思いますので、そんなときは一緒に紐解いていきましょう。

もちろん純粋な興味や関心も大歓迎です。

実施するかどうかも含め、気軽に私たちにお問合せください。

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この記事を書いた人

心太のアバター 心太 臨床心理士・公認心理師

臨床経験10年(2025年時点)
小学生から大学生までの教育相談、精神科クリニックでの心身の相談まで多岐にわたる現場を経験。
専門領域:認知行動療法、ブリーフセラピー、カップルカウンセリング、心理検査
趣味:バスケなど運動全般、パソコン

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