

- 「せっかく良くなったのに、また体調が悪くなった…どう治せばいいか分からない」
- 「最近疲れやすい。前はもっと頑張れたのに…年齢のせいなのだろうか?」
- 「大切な家族や職場の同僚がよく体調を崩している。どうすれば力になれるか分からない」
- 「自分はストレスとは無縁でタフな人間だと思っていた。まさか休職するなんて…」
カウンセリングでは、何度も体調を崩されてきた方と面接することがあります。
その中で、ストレスと体調との関係性について知らなかったという方はめずらしくありません。
ウイルスが原因のような風邪と違って、心の問題は目に見えなくて複雑でややこしいからでしょう。
今回は全3回にわたって、ストレスと不調の複雑なメカニズムをわかりやすく説明します。
この3つの記事を読み終える頃には、心と体の仕組みについて以下のことが整理できるでしょう。
- 繰り返す体調不良のメカニズムを見える化し、不調との向き合い方が見つかります。
- 周りの大切な人が抱える不調のメカニズムを理解でき、的確なサポートを行えます。
- ストレスに強い人でも、心身の健康を深く知ることで、気づいていない負担や真の健康を維持できるヒントに繋がるでしょう。
これからお話しする
①『生物心理社会モデル』(第1回 本記事)
②『ストレス脆弱性モデル』(第2回)
③『ストレスと自律神経の関係』(第3回)
これらは複雑に絡み合う心身の不調を多角的に理解し、解決の糸口を見つけるための枠組みです。
これらの記事が、あなた自身や周りの人の状態をさらに理解でき、心身ともに穏やかな毎日を送るヒントへ繋がることを願っています。
心身の不調を多角的に見る必要性とその理解方法


『頭痛がひどい時は、お薬を飲めばいい』
『落ち込んでいるなら、励ませばいい』
私たちは「体の不調は体の問題」「心の不調は心の問題」だけを単純に見ればいいと考えがちです。
しかし心身相関といって、心と体は密接に繋がっており、切り離して症状を理解することは難しいです。
特にメンタルヘルスの問題は、さまざまな要因が複雑に絡み合って、体調不良を作り出しています。
その複雑な絡み合いを解きほぐし、心身の状態を深く理解するための『3つの枠組み』を紹介します。
「生物心理社会モデル」とは?~私たちを“3つの側面”から理解する~
心身の不調を理解するための最初の枠組みは、「生物心理社会モデル(Biopsychosocial Model:BPSモデル)」です。これは、1970年代に精神科医のジョージ・エンゲル医師によって提唱されました。
健康や病気を、単に医学的な問題としてだけでなく、より広い視野から総合的に捉える考え方です。
私たちの心身の状態は、以下の3つの側面が複雑に影響し合って形作られると考えます。
- (1)生物学的側面 (Bio)
-
私たちの「体」そのものに関わる側面です。
たとえば、
- 生まれ持った特性や遺伝的な体質
- 脳の機能や神経伝達物質のバランス
- ホルモンバランスの変化(思春期、更年期、妊娠・出産)
- 病気やケガ、治療の副作用
- 睡眠不足や栄養状態など身体のコンディション
主に医学的な側面から見た要因が含まれます。
- (2)心理的側面 (Psycho)
-
私たちの「心」や「考え方」に関わる側面です。
たとえば、
- 物事をどのように捉えるかという認知のクセ(ポジティブ思考、ネガティブ思考)
- ストレス対処スキル(周りを頼る、一人で解決する)
- 感情コントロールの仕方や感情表現のパターン
- これまでの人生経験や価値観、過去の傷つき体験の影響
- 自己肯定感や自己評価の度合い
個人の内面的な心の動きや、学習・経験によって形作られる要因が含まれます。
- (3)社会的側面 (Social)
-
私たちを取り巻く「環境」や「人間関係」に関わる側面です。
たとえば、
- 家庭環境(構成、関係、経済的な状況)
- 職場や学校の環境(仕事内容、学業の負担、人間関係)
- 友人関係や地域社会との繋がりの度合い
- 文化的背景や社会的な常識・価値観からの影響
- 利用できる社会的支援(相談機関、公的サービス、周囲からの助け)の有無
個人を取り巻く外部の環境や、他者との関わりの中で生じる要因が含まれます。
生物心理社会モデルはメンタルヘルスを理解する上で重要
なぜ3つの側面(生物・心理・社会)から総合的に捉える考え方が重視されるようになったのか?
かつては、「特定の病気の原因(例:細菌、遺伝子異常など)が、特定の疾患や障害を引き起こす」という、直線的な因果関係で捉え、その原因を取り除くことが治療の中心でした。
このアプローチは多くの病気の治療に貢献し、今でも非常に重要な考え方です。
しかし、それだけでは説明できない心身の不調や、複数の要因が絡み合っている問題も多く出てきました。
たとえば、
糖尿病を患っている人が、仕事の昇進をきっかけにプレッシャーを強く感じ、ストレス対処でやけ食いするという場合を考えてください。
生物学的側面だけを見れば糖尿病のお薬を投与するとなるでしょうが、本人のストレス対処方法を新たに考える必要もあるでしょうし(心理的側面)、仕事のサポートも必要かもしれません(社会的側面)。
同じ病気でも、複数の要因からアプローチすることで生活のしやすさは変わっていきます。
この生物心理社会モデルは、一人ひとりの状態をきめ細かく理解するために提唱され、特にメンタルヘルスの領域でその重要性が認識されています。




(例)メンタルヘルスの問題を「生物心理社会モデル」で見てみると…
うつ病でも「気分が落ち込む病気だから、無理をさせない」というだけでは解決しません。
ケースごとに、この3つの側面のどういった問題を抱えてうつ病を発症したのか?を整理することで、解決方法も変わってくるでしょう。
(1)生物学的側面 (Bio):
・遺伝的な要因(うつ病になりやすい体質)
・ホルモンバランスの変化
・慢性的な睡眠不足や身体疾患の影響
(2)心理的側面 (Psycho):
・物事を悲観的に捉えやすい思考パターン
・完璧主義や過度な責任感といった性格傾向
・過去の裏切られ体験や大きな喪失体験
・ストレス対処法が少ない
(3)社会的側面 (Social):
・職場での過重な労働や人間関係のトラブル
・家庭内での問題(不和、介護疲れ)
・孤立感や、社会的なサポートの不足
・経済的困窮、ライフイベント(失業、離婚)
互いに影響し合っているため、俯瞰的に考える必要がある
大切なのは、これらの要因が互いに影響し合っているという点です。
互いに影響し合っているという点では、ベルタランフィの一般システム理論の考え方も参考になります。


(図解)ベルタランフィの一般システム理論
システムとは、あるまとまりをもった意味のある要素の集まりとなります。
単なる部分の集まりではなく、部分間の相互作用によってさまざまな反応が生じます。
システムは、より上位のシステムに包含されるサブシステムとして存在し、階層的な構造となっています。
〇私の身体の反応は個人システム:
私はストレスを抱えると、身体に何かしらの反応が起こります。
〇家族システム:
その私は家族など所属している集団の影響を受けて反応します(夫婦喧嘩、娘の不登校、実家からの圧力など)。
〇コミュニティや一族などの上位システム:
その家族システムもさらに上位のシステムから影響を受けています(夫が職場のストレスから影響を受け、家庭とのバランスを崩すなど)。
〇地域、国家などの上位システム:
コミュニティや一族もさらに上位のシステムから影響を受けています(働き方改革や法整備など)。
たとえば、
社会の経済不況は会社や各家庭に影響を与え、それぞれの経済的安定性にも影響します。
あるいは子どもや教師が集まってできる学校システムは、より上位の文部科学省や教育委員会の方針を受けています。
このようにさまざまな階層、レベルのシステムも,相互につながり,関わり合っていると考えられます。
心身の不調という状態だけでも、その背景には多様な要因が複雑に絡み合っている。
だからこそ画一的な対応ではなく、一人ひとりの状況に合わせた多角的なアプローチが必要なのです。
第1回目の記事はここまでとなります。
ストレスと体調との関係は単純ではないからこそ、目に見えないところでストレスが蓄積している場合があります。
ここまで、心身の不調は「体・心・環境」の3つが複雑に絡み合って起きる(生物心理社会モデル)というお話をしました。
原因が一つではないからこそ、解決には少し時間がかかることもあるのです。


複雑だからこそ、無理しすぎずに「自分の限界」を早めに知ることは大切になってくるよ
では、この複雑なストレスに対して、私たちはどこまで耐えられるのでしょうか?
その限界値を知るヒントとなるのが、第2回目の記事の『ストレス脆弱性モデル』という考え方が参考になります。
次回は、あなたの心がどれくらいのストレスまで耐えられるのか、そのメカニズムを「ダム」に例えてわかりやすく解説していきますので、よかったら続きをみてくださいね。











