ストレスに負けない自分作り!ストレスマネジメントとコーピングを徹底解説

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トップ画像。ストレスマネジメント

ストレスは、仕事、人間関係、家庭、健康などさまざまな場面に潜んでいて、私たちの生活とは切り離せない存在です。

なぜなら、現状から変化することは何でも”ストレス”になりえるからです。

プラスとされる結婚や昇格も”現状から変化”という点では重大なストレスイベントとして扱われます。

でもこれって新生活のスタートでもあり、”スパイス”として私たちに生きがいや成長を感じさせてくれますよね。

捉えようによっては、ストレスは悪い刺激にも良い刺激にもなる!
上手く付き合えば、心の成長や生きていく力にも繋がるよ!

”変化”がめまぐるしい現代では、精神的健康はますます重要になってきています。

今回の記事ではストレスを自分自身でコントロールし、上手く付き合っていくストレスマネジメントの紹介となります。

この記事を読み終える頃には、あなたのストレスとの付き合い方のヒントが見つかることを願っています。

目次

ストレスを細かく整理して、うまくコントロールしよう

私たちは、日常的にストレスという言葉を

①原因としての“ストレス”
②結果としての“ストレス”

という風に、区別せずに使っていることが多いです。

この3つの関係を分かりやすくするために、心をゴムボールにたとえて説明します。

ストレッサーはボールを押さえつける力、ストレス反応はボールの歪み、ストレス耐性はボールの弾力性です。

厚生労働省の『15分でわかるセルフケア』に載っているゴムボールに喩えたストレス要因、ストレス反応、ストレス耐性の図。

(引用)厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトこころの耳「 15分でわかるセルフケア」

ボールを指で押さえつけると、弾力性によってゴムボールは元の状態に戻ろうとします。

しかし、強い力で押し続けると、ボールは空気が抜けていき、歪んでしまいます。

この時の歪みを生じさせる指の力が「ストレッサー」であり、歪んだ状態が「ストレス反応」、元に戻ろうとする力が「ストレス耐性」となります。

R.S.ラザルスとS.フォルクマンのストレス理論

ストレス理論は複数ありますが、今回紹介するのはR.S.ラザルスとS.フォルクマンのストレス理論です。

「人間と環境との関係」によって、さまざまな変数からなるプロセスとしてストレス全体を捉えています。

R.S.ラザルスとS.フォルクマンのストレス理論の全体像を表した図

R.S.ラザルスとS.フォルクマンのストレス理論を一部改編

以下、それぞれの過程を詳細に見ていきます。

①出来事が発生(ストレッサー)した後のストレス反応の強さは、認知的評価が関係してきます(②出来事の評価(一次的認知評価)→③対処可能かどうかの評価(二次的認知評価))。

R.S.ラザルスとS.フォルクマンのストレス理論のストレッサー→一次的認知評価→二次的認知評価までのプロセスと、それらに影響を与える要因を表した図

認知的評価に影響を与える要因は多岐にわたりますが、主な要因は『個人要因(個人の特性)』と「状況要因(状況の特性)」に分かれます。

『個人要因(個人の特性)』は、個人の内的な特性や状態を表します。

状況が何を意味するのか、それに対して何ができるのかという評価の「レンズ」として機能します。

個人要因(個人の特性)
コミットメント

出来事に対して、心理的に何が賭けられているか?あなたにとって出来事を重要・意味のあるものとして評価します。

コミットメントが強いほど、それが脅かされた際の『害-喪失」や『脅威』は大きくなり、傷つきやすさも比例します。

たとえば、「長年心血を注いできたプロジェクトが中止になる」「大切な人間関係に亀裂が入る」といった状況を考えてみてください。
そこへのコミットメントが深いほど、状況がもたらす害や脅威は個人的に大きく評価され、結果として傷つきやすさも増大しやすいです。

一方で、コミットメントの強さは恐怖を減らし、問題に対処し続ける努力の動機づけとなり、困難を乗り越える力にもなります。

このようにコミットメントの強さは、『脅威』にも『挑戦』にも影響を与え(一次的認知評価)、対処し続ける努力の動機づけにも影響します(二次的認知評価)

信念

過去の経験から作られた、あるいは文化的に共有された認知であり、状況を解釈する際のフィルターとして機能します。

信念には、『コントロールについての信念』と『実存的信念』があり、一次的認知評価と二次的認知評価に影響を与えます。

『コントロールについての信念』

  • 一般的信念:
    全般的な傾向として、自分の行動が結果に影響を与えると信じるか(内的統制)、自分以外の要因によって支配されると信じるか(外的統制)、というものです。

    この信念は、状況があいまいだったり、新規場面で影響力を持ちます。

    『私は状況をある程度コントロールできる』と信じる人は、状況を「脅威」よりも「挑戦」と捉えやすく、対処も大丈夫だろうと考えます。
  • 状況的コントロールの評価:
    特定のストレスフルな人間-環境との関係において、自分がどの程度影響を与えられるかという評価です。いわゆる自己効力感というものです。

    特定の出来事に対して、

    自分が行動をうまく遂行できるという「効力期待」

    その行動が望ましい結果に繋がるという「結果の期待」

    が含まれます。

    特に二次的認知評価に直結し、対処行動の選択や継続に影響します。

これらの認知的評価は固定的ではないよ!
サポート資源の情報や自身の反応などによって変化していき、「再評価」されていくんだ。

『実存的信念』

信仰、運命など人生から意味を作り出し、希望を維持する信念です。

困難な状況をどのように位置づけて受け止めるかという、より高次の一次的認知評価に影響を与えます。

希望を持ちながら問題に対処し続けるため、間接的に二次的認知評価に影響します。

自己

コミットメントと信念を包含する、より全体的な人格概念です。

あなたにとって何が重要であるかを示すもので、いわば「自分らしさ」全体が、認知的評価のあらゆる側面に浸透していき、湧き上がってくる感情と強く結びついています。

湧き起こる感情がどういったものか?に気づけることで、そのストレッサーが自分にとって何が大切で、何が危険なのかを教えてくれるでしょう。

心理的ストレスへの感受性(傷つきやすさ)

「傷つきやすさ」は、

などの「個人要因」が絡み合って、過去から現在にかけて形成されていくものです。

「傷つきやすさ」は、以降の「状況的要因(状況の特性)」とも相互作用します。

たとえば、コミットメントが強くて傷つきやすい状態の時に、事態が曖昧で予測もつかない、サポートしてくれる人もいない状況を想像してください。
認知的評価もネガティブに捉え、強いストレス反応を引き起こすでしょう。

一方で、こういう状況下で有効なサポート資源が見つかると、「傷つきやすさ」はカバーされ、その状況を『挑戦』として捉えられるようになり、うまくストレスを乗り越えることもできます。

ストレッサーを『脅威』として捉えるかどうかは、一次的認知評価と二次的認知評価のどちらも大事です。

次は『状況要因(状況の特性)』についてです。

ストレッサーそのものの性質や時間の要素など、客観的な側面にまつわる条件のことを指します

状況要因(状況の特性)
新奇性

経験のない新しい状況は、自分にとって何をもたらすか?の判断材料が少ないため、脅威/挑戦のどちらにも捉えられやすいです。

経験がないからこそ情報を調べて、気持ちを安心させる対処を取ることはよくあります。

ただし、相談する相手を間違えたり、玉成混合のネットから得たさまざまな情報は、逆に『脅威』として評価されやすくもあります。

それゆえに誰が発信しているか?その情報の確からしさが重要となります。

予測性

出来事を予測できるかどうかは、ストレス反応に影響を与えます。

悪い出来事の発生可能性は『脅威』と感じて、常に緊張と不安に晒され続けます。

一般的には予測可能な出来事や経験のある状況は、ある程度の準備できるため、ストレスが軽減する可能性もあります。

一方で、予測できても『自分にはどうすることも出来ない』と感じてしまうと、無力感でストレスフルへと繋がります。

重要なのは、その状況に対してコントロール感を持てられるかどうかです。

時間的な要因
  • 切迫度:
    危険や締め切りが差し迫っているかどうかを表します。

    切迫度の高い状況下では、意思決定の質が低下します。

    一方で、待機時間が長すぎるのもストレス反応を増加させます。
  • 持続期間:
    ストレスフルな出来事が続く長さを表します。

    慢性的に続く場合は、疲弊に繋がります。

    一方で、慣れによってストレス反応が減少することもあります(苦手なプレゼンも回を重ねて慣れてくるなど)。

    ただし、それらも心身の疲弊の程度やサポートの有無、状況をコントロールできている感覚、ストレスフルな状況が終わる見通しによっても、負荷は大きく変わります。
  • 時間的な不確実性:
    ある出来事がいつ起こるか分からない状況を表します。

    私たちは出来事が「いつ」「どのようなパターンで」起こるのかを事前に予測することで、準備やエネルギーの配分ができ、コントロール感を持つことができます。

    いつ起こる変わらない状況は、脳が常に「もし〇〇だったら…」と身構えて思考し続けることになり、精神的混乱や恐怖、過度の心配に繋がります。
情報のあいまいさ

ストレッサーの情報が不鮮明、不十分である状態を指します。

「時間的な不確実性」が”いつ起こるか分からない”を表していましたが、これは情報の「質」や「量」の不十分さを表しています。

「情報が断片的で全体像が見えない」といった状況が該当するでしょう。

情報が明確であれば、客観的な事実に基づいて評価を行うことができます。

逆に情報が不鮮明な場合、人は自身の評価の「レンズ」(上述した『個人要因』)を通して、状況を解釈しようとします。

『脅威』を強める方向へ行く人もいますし、解釈次第で自由に動けるので『脅威』が減少する人もいます。

「情報のあいまいさ」は個人的要因(気質・信念・過去の経験)の影響に大きく左右されるのです。

④対処(コーピング)→⑤ストレス反応→⑥モニタリングと再評価の流れについての説明です。

R.S.ラザルスとS.フォルクマンのストレス理論のストレス対処(コーピング)→ストレス反応→再評価のプロセスを表した図

出来事をストレスフルだと判断し、対処可能かどうかを評価した上で、④対処(コーピング)を意識的にも無意識的にも選択します。

コーピングとは、ストレスにうまく対処しようとする思考や努力のことを指します。

「ストレス対処は〇〇すればいい」という風に、コーピングを単一的・固定的なもので考えるのではなく、「プロセス」として捉えることが重要です。

どちらかのコーピングが優れているというわけではなく、状況や体調によって柔軟に使い分けることが重要だよ!

しかし、私たちが実際に抱えるストレスには長期的に続くものも多いです。

ストレッサーがどう展開していくかによって、実際の対処行動の内容も変化していけるといいでしょう。

ネガティブな結果が出て、ストレス反応も悪化しているにも関わらず、同じコーピングを使い続けてしまうと、悪循環にはまってしまう場合もあります。

今のやり方を続けることで状況はどう展開しているか?

前に進んでいるのか?

停滞しているのか?

自分のストレス反応はどうなっているか?

俯瞰してモニタリングすることが重要です!

その結果を受けて、状況やコーピングを再評価し、時には別のコーピングへと柔軟に変えて、また新たな認知的評価を行っていく・・・。

この絶えず変化していく思考や行動の努力が、ストレスマネジメントで最重要となります(⑥モニタリングと再評価)。

コーピングは『質より量』とも言われます。

ストレスフルな状況は時間ともに展開していき、その時々に見合ったコーピングが必ずあるはずです。

状況によっては、問題を「受け入れる」「無視する」「耐える」といったことも、大切な戦略です。

コーピングを柔軟に使い分けるためには、コーピングの量も重要です

あなたはどのタイプのコーピングをどれくらい持っていますか?
(コーピングの質問紙 外部リンクを貼る 著作権の関係で難しいか・・・)
もしバランスが悪ければ、これを機に増やしてみることでストレスとの付き合い方が少し楽になるかもしれません。

サポート資源はあらゆるプロセスに影響を与えることができます。

サポート資源は非常に重要な概念でもあるため、別記事でもまとめています。
(サポート資源の記事へリンク予定)

サポート資源は、ストレスフルな状況下での負担を軽減し、問題解決を具体的に助けることで、メンタルダウンを防ぐことに繋がります。


以上、ストレスマネジメントについて解説してきました。

ストレスを”スパイス”にすることができると、人生はハリのあるものに変えることもできます。

そのためには気合と根性も大切ですが、それ以外にもストレスを乗り越えるためのさまざまなコーピングやサポート資源を活用してみましょう。

最後に:
ストレスに強い/弱いは、あなたの資質の問題ではありません。
ストレスマネジメントを理解し、たくさんのコーピングを見つけられると、自分でうまくストレスをコントロールできるでしょう。
  • 今回お伝えしたストレスマネジメントは、かなり複雑で総合的に書いた内容となります。

    全てを理解することは難しくても、コーピングだけでも理解が進むと、十分な助けになると思います。
  • もし自分の置かれている整理して、うまくストレスマネジメントをしていきたい場合には、専門家である私たちカウンセラーに相談することもできます。
    困った時は、あなたの新たな『サポート資源』としてご活用ください。

【参考文献】
Richard S.Lazarus & Sunsan Folkman(1984).STRESS, APPRAISAL, AND COPING. Springer Publishing Company, Inc., New York.(本明 寛・春木 豊・織田正美)(監訳)(1991). ストレスの心理学:認知評価と対処の研究 実務教育出版.

影山隆之.「勤労者のためのコーピング特性簡易尺度(BSCP)の開発:信頼性・妥当性についての基礎的検討」.『産業衛生学雑誌』,2004,46,p103-114.

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この記事を書いた人

とげまるのアバター とげまる 臨床心理士・公認心理師

臨床経験11年(2025年時点)
小中高のスクールカウンセリング、外部EAPにて企業のメンタルヘルス支援を経て、現在は精神科・心療内科クリニックと企業社内カウンセラーとして勤務。
専門領域:認知行動療法、人間性心理学、復職支援、心理教育
趣味:youtube鑑賞、食べ歩き

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