

第1回目の記事『【緊急対処編】 なぜイライラするの?怒りの正体と、今すぐ鎮める方法とは』では、カッとなった時のクールダウン法についてお話ししました。
- 「一旦落ち着くことはできた。でも、後から思い出してまた腹が立ってくる…」
- 「そもそも、なんで私はこんな些細なことで怒っちゃうんだろう?」
今日はそんなモヤモヤを解消するために、あなたの根底にある「怒りのスイッチ(コアビリーフ)」をお伝えしていきます。
『コアビリーフ』自分が抱いている価値観からくる怒りを理解する
瞬発力のある衝動的な怒りと距離を取ることができたら、なぜ自分は怒ってしまったのか?何に腹を立てている
?明確にするための整理をしましょう。
- 今どうしてこの状況になっているのか?何があったのか?
- 今回の怒りの一次感情は何だったのか?
- 今後どうして行ったらよいのか?
怒りは、“理想と現実が合わない”といった期待や欲求が成就されない時に生じる感情だということを思い出してください。
怒りという感情の背景には、自分にとって譲れないこだわりや常識、価値観である『コアビリーフ』との食い違いなどがあったのかもしれません。
私たちが怒る理由は、自分の信じている『べき』が裏切られた時に起こりやすいです。
そして、『コアビリーフ』は自分だけに通用するルールであることが多く、人を絶対的に縛れるルールではありません。
『怒り』をコントロールしたい時は、『コアビリーフ』を見つめ直す、適用範囲を緩めてあげることが重要です。
そのためには、『怒り』の感情と結びつきやすい代表的な『コアビリーフ』を知っておくと、整理しやすくなります。
代表的な『コアビリーフ』は以下の6つです(一般社団法人日本アンガーマネジメント協会より)。
①道徳心
ルールやマナーをきちんと守る正義感の強い人です。
度を超すと、他人のマナーやルール違反が気になってしまい、自分には裁く権利のないことまで口を出し、『自分が注意しなければ!正さなければ!』と怒りを露わにしてしまいます。
②利己心
自分のルールや価値観を大事にしている人です。
『好き嫌いをハッキリ言えることは良いこと』『完璧を目指すことは良いこと』といったように自分のルールや価値観を大事にしているあまり、度を超すと、自分と価値観の合わない人が許せず、時には非難/排除しようとしてしまいます。
③自尊心
自分を自分で大切にする気持ち、考え方を持つべきだという感覚が強い人です。
自分のことを大切にする感情が強いので、度を超すと、他人からの評価を必要以上に気にしてしまい、邪険に扱われたり軽んじられたりすると激怒してしまいます。
④執着心
自分できちんと考えて物事を判断し、完璧にやりきることが大切だと考えている人です。
頑固で融通がききにくく、度を超すと、自分の考えを意地でも譲ろうとしないため、少々のことでイライラしやすくなります。
⑤警戒心
簡単に人を信じたりせず、十分用心すべきという考え方で、いつも冷静で慎重に物事をこなしていく人です。
人に心を開くことが苦手だったり、人間関係にストレスを感じやすく、度を超すと、警戒心が猜疑心へ、謙虚さが劣等感となり、強い刺激を受けると怒りに変わりやすいです。
⑥自立心
主体性がなく、他の人の意見に同調するなど「周りに流されるべきではない」と考えている人。
他人に合わせることを嫌がったり、言いたいことをハッキリ言わない人にイライラしやすいです。度を超すと、独善的となり、誰に対しても反抗的/批判的態度を取ってしまいます。
『コアビリーフ』は過去の経験や文化的要因などによって幼い頃から形成された自分にとっての暗黙の価値観です。
『コアビリーフ』自体に良い/悪いはありません。場面や状況によっては役立ちますし、逆に窮屈さを感じてしまうことがあるだけです。
大事なのは、怒りに結びつきやすい『コアビリーフ』を知っておくことで、その価値観と一時的にどう向き合うか?によって怒りをコントロールしやすくなるのです。
以下は、あなたが抱いている怒りを深く理解する方法です。
アンガーログ
怒りの感情を感じた時、その気持ちを書き出すためのシートです。書き出すことによって、自分の怒りを客観的に見つめてクールダウンでき、それだけでもコントロールしやすくなります。
シートを使って、以下の内容を書いていきます。
- 日時:怒りを感じた日時を書く。
- 場所:どこで起こった出来事かの場所を書く。
- 出来事:どのような出来事だったかを書く。ここでは感情を交えずに事実だけを書く。
- 思ったこと:その時にどのように思ったのか。思いつくままに書く。
- 自分が取った言動:怒った結果、何をしたか、何を言ったか、何も言わなかったかなどを書く。
- してほしかったこと:自分はどうしてほしかったのか。「願望」や「希望」などの本音を書く。
- 結果:⑤の言動をとった結果、どういうことが起きたかを書く。相手に言われたことがあれば書く。
- 怒りの強さ:軽くイラッとしただけなのか、激高したのか、その強さを%で書く(100%=自身にとって最大の怒り)。
※気分が沈んでいる時や寝る前などは、怒りの増幅や持続を避けるために書かないこと。
3コラム
上記のアンガーログを記録し続けることで、自分の『コアビリーフ』(”~べき”)といった怒りのクセを見つけやすくなります。
その『コアビリーフ』が過度になりすぎていないか、緩めてもいいのか?など許容範囲を広げていくような取り組みとなります。
シートを使って、以下の内容を書いていきます。
- 怒った事実:イライラした出来事を一つ選び、その時の感情をストレートに書く。
- 自分のコアビリーフ:ストレートに感じたことから導き出される自分のコアビリーフと、コアビリーフに強いクセがあるとしたら、どのようなクセがあるかを書く。
- コアビリーフの書き換え:コアビリーフのクセをどのように書き換えたら、自分にとっても、周りにとっても長期的に健康的でいられるか?幸せな状態になるか?を書く。
コツとして、2段目、3段目では『他人目線(第三者視点)』で考えることです。『自分のコアビリーフは絶対ではない』というスタンスで書いてみてください。
※この3コラムで大切なことは、自分のコアビリーフを否定するものではありません。ただあなたの置かれている状況や場面によって、コアビリーフから誘発された怒りで辛さを感じているならば、「正しいかどうか」ではなく、自分にとっても、相手にとっても、長期にわたって心身ともに健全でいられる考え方なのかどうかという視点で見つめ直すことです。
考え方を整えるヒント
怒りのパターンやコアビリーフに気づくことができたら、それが絶対的なものではないと認識したうえで、どう整えるといいか?以下に参考となる持っていき方について紹介します。
目的に集中する
怒りを感じた際は、相手の失敗やミスが自分のコアビリーフに反している!と感じて、怒りに囚われてしまいます。そういった時は、本来の目的や達成したいゴールに意識を向けることで、怒りに囚われる状態から一歩抜け出せた考え方が導きやすくなります。
一度立ち止まって、この場面では「最終的にどうしたいのか?」や「この状況で達成すべきゴールは何か?」と考えてみましょう。相手を威圧することや、マウントを取ることでしょうか?たいてい達成したい目的は建設的な事の方が多いでしょう。
他者目線を持つ
自分の価値観が正しい/絶対ではないと感じられれば、相手の言動に対しても寛容になれます。
相手の立場や状況を想像することで、「なぜ相手はそのような行動をとったのか」を理解しようとする姿勢が生まれます。これによって、感情的な非難ではなく、共感に基づいたコミュニケーションが可能になります。
また、「周りから見たら、自分の言動はどう映っているだろうか?」と自分の思考を一歩離してから見ると、冷静さを取り戻して、自分の価値観が過度になっているかどうかに気づきやすくなります。
相手への期待を検証する
『怒り』は自分の期待を裏切られた時や自分の”~べき”から外れた時に生じやすいです。
怒りを感じた時、「相手が~すべきだった」と考えていないか、自分の心の中の「べき」に意識を向けます。
- その”~べき”は果たされないと本当に困ることなのでしょうか?
- 大きな損害が起こるのでしょうか?
命や危険に繋がることは”~べき”を強く押した方がいいでしょう。しかし、重大なことに繋がらないのであれば、自分の”~べき”で相手との関係を不穏にしてでも、相手や状況をコントロールする必要性がそこまであるのでしょうか?
残念ながら、自分がコントロールできるのは自分の行動だけであり、相手や過去はコントロールできません。
相手への期待を見直すことで、相手の領域に過度に踏み込まず、適切な境界線を引くことができます。
今回は、アンガーログや3コラムを使って、自分の「怒りのクセ(コアビリーフ)」を見つける方法をご紹介しました。
「あ、私は『正義感』が強すぎて怒っていたんだな」と気づくだけでも、大きな一歩です。
でも、生きていれば「どうしても相手に伝えなきゃいけないこと」もありますよね。
「怒らないように我慢する」のではなく、「相手と喧嘩せずに、自分の気持ちをスッキリ伝える方法」も怒りをコントロールするために重要な方法です。
最終回となる次回は、人間関係を良くする「アサーション」という伝え方の技術をお伝えします。









