

- 「ついカッ!となって、またキツいことを言ってしまった…」
- 「言われたことが納得いかなくて、ずっとモヤモヤしてイライラする…」
- 「最近ずっとイライラして疲れているし、些細なことで怒りやすくなってしまった…」
私たちは『怒り』とどう付き合えばいいか、学校で習ったり、学ぶことはありません。
『喜び』や『悲しみ』などの感情は受け入れられることも多いですが、『怒り』は出してはいけない/良くない感情として扱われる事が多いです。







でも、『怒り』をうまく処理できないとデメリットもあるの。
- 怒りを抑え込むと精神・身体症状に影響する。長引いてしまうと、疲弊してうつ病へと発展することもある。
- 怒りを爆発させると人間関係が悪化する。時には手が出たり、暴言を吐いて加害者になってしまう場合もある。
- 怒りをコントロールできなくて自己嫌悪に陥る。うまく対応できないことで自己肯定感や自己効力感が下がる。
アンガーマネジメントは怒りをゼロにするわけでもなく、否定するものでもありません。
怒りの感情を大事にしつつも、感情に振り回されずにコントロールし、適切な形で表現できることを目指します。
適切に怒りを処理して葛藤を減らすことで、心身の健康や人間関係を円滑に保つことに繋がります。
この記事を読むことで、
- 怒りのメカニズムが分かり、自分の怒りの正体が見えてくると対処しやすくなります。
- 適切な表現方法や発散方法を学ぶことで、気持ちのいい人間関係の持ち方が見つかります。
「怒りを出しすぎて人間関係が上手くいかない」、「怒りを抑え込みすぎてしんどくなる」、怒ってしまいがちな人を理解したい、そういった方はぜひこの記事を読んでみてくださいね。
この記事は3回にわたってお届けしていきます。
あなたの怒りと上手く付き合うスキルとしてお役に立てれば幸いです。
病気によっては、一時的に怒りをコントロールすることが難しい状態の時があります。
- うつ状態によってイライラをコントロールする力自体が弱まっている時
- 双極性障害の躁状態・混合状態の時
- ホルモンバランスが崩れている時
こういった状態像の時は、感情をコントロールすることへの負担が強くて症状が悪化したり、失敗体験が重なって自己嫌悪になる場合もあります。まずは今の症状を緩和することが先決です。
怒りとは?
怒りは、“理想と現実が合わない”といった期待や欲求が成就されない時に生じる感情です。
- 「本当は〇〇しなければいけないのに!(物事がうまく進まない)」
- 「なんで分かってくれないのか!(分かるべきだ)」
- 「理不尽だ!(公正に扱うべきだ)」
こういった“~しなければならない”“~べき”の思考や認知と結びつきやすいです。
予定していたことを邪魔されたり、理由も無いのに傷つけられたり、自分が不当に扱われたり…と考えると、怒りがこみ上げてきますよね。
私たちは、単純に損害を受けたというだけで怒るのではありません。
ルールや期待など自分にとっての“こうあるべき“を侵害された時に怒りが生じやすいのです。
たとえば、
バスの中で他人に足を踏まれて痛かったとします。怒るかどうかは、その人の意図や理由をどう考えるかによります。わざと踏んだり、踏んでも謝罪や会釈もせずに気にしないで過ごされると腹が立つでしょう。一方で、バスが揺れてバランスを崩してたまたま踏んでしまったり、会釈をされると、怒りもそこまで強くならないでしょう。
わざとではない行為に怒りを感じるかどうかは、道理をどのように考えるかに関係しています。
単純な話かもしれませんが、怒りの問題を難しくしているのは、何を公正と考え、何を当然と考えるかが人によって大きく異なるという点です。
人によって“こうあるべき”という価値観や常識は、生まれ育った環境や経験によって異なるのが自然です。
そのため、自分の思っている通りに人は反応しないと分かっていても、思った通りにいかない時には怒りがこみ上げてくるものです。


大事なことは、怒りを感じないようにすることではありません。
『怒り』は自然な感情であると同時に、あなたの大事にしている価値観が隠れている場合もありますので大切にしましょう。
ただ表現の仕方(アウトプット)によってはデメリットへ繋がるため、出来事に対して、どう捉えて、何に傷ついたのか?に気づいて、それをどう表現するか?が重要です。







”怒り”自体は人間として自然なものだから、否定しなくていいよ。
その”怒り”を大事なサインと捉えて、自分は何に傷ついたり、困っているのか?それをどう表現するといいのか?が重要なんだ
怒りは二次感情


怒りは二次感情とも言われ、その下にある一次感情(本当の気持ち)の化けた姿である場合が多いです。
たとえば、
- 傷ついたという「悲しみ」「虚しさ」
- 何とか助けてもらいたいという「期待」「願望」
- 期待通りではなかったという「失望感」「悲しさ」
- うまくいかないという「挫折感」「劣等感」
- 分かってもらえないという「孤独感」「空虚感」
- 状況が分からない、恥ずかし思いをするかもしれないという「不安感」「屈辱感」
一次感情は一つだけでなく、ミックスされた状態で氷面下に隠れている場合も多く、気づきにくいものです。
一次感情に気づけると、『怒り』の表現の仕方や解消の仕方が大分変わっていきます。
たとえば、同棲している恋人同士の以下の場面を想像してみてください。
彼氏が仕事から帰ってくるのが遅くて、彼女に連絡できなかった状況。
彼女は彼氏に連絡を送っても返事が来ませんでした。
最近彼氏と喧嘩も多く、彼女は自信がなくなっていて、関係が続かないかもと心配していたところです。
夜遅くに酔っ払って帰ってきた彼氏の顔を見ると、彼女は『なんですぐに返事しないの!お酒も飲んで、信じられない!』と怒りで表現しました。
彼氏は攻撃されたと感じてしまい、『俺が仕事忙しいのは分かっているだろ!こっちだって仕事の付き合いがあるんだ!それに地下で電波も悪くて、連絡が来ていたことにも気づかなかったんだよ!』と喧嘩腰で応対してしまいました。
(電波が悪くても、帰宅途中にメールを返せるだろうといったツッコミはなしです(笑)。焦点はそこではありません)
さて、この時の彼女の一次感情は何でしょうか?
彼女は彼氏が帰ってこないことで、浮気されているかもといった『不安』や大事にされていない『悲しさ』があったのかもしれません。
もしそれが一次感情であれば、それを彼氏に伝えた方がよかったかもしれません。


『最近上手くいっていないから、連絡が返ってこないと、他の女性と一緒にいるんじゃないかって不安だったの。自信もなくなっていたから、返事が来ないことで大事にされなくなったのかなって悲しくなっちゃったの』
悲しさも交えて伝えると、彼氏の応対も変わったかもしれません。







一次感情をうまく伝えることができると、相手は親身になってくれることの方が多い。でも二次感情である『怒り』の方は相手にも伝染しやすく、防衛本能として反撃されやすいんだ。
攻撃のやりとり自体が新たなストレスの蓄積となり、怒りやすい状態をさらに作ってしまうという悪循環に陥ってしまうのです。
怒りは小出しに表現していきましょう
怒りといっても、イライラしている段階~激高の段階までさまざまです。
どのような事が怒りの引き金になりやすいかは、その人の過去の経験や、その人が守らなければならないと思っている価値観やルールに関係しています。
たとえば、
いじめや虐待を繰り返し受けてきた人は、将来同じ目に遭わないように警戒するでしょうし、注意深く弱みを見せないように適応していくことがあります。
そのため、目の前の出来事が自分にとって不利に働く、攻撃されそうだと感じてしまったら、実際はそこまで過敏に反応しなくてもいい出来事でも不釣り合いなほど激しく怒ることもあります。
また、日々のプチストレスや不満、疲労などが蓄積した結果、ストレスを処理するパワーが無くなってきて、いつでも怒りやすい状態が出来上がっている場合もあります。
急に怒りが出た時は、
- いじめなどの過去の傷つき体験が間接的に刺激され、コップのひび割れ状態から溢れたのかもしれません。
- 日々蓄積した不安や不満(一次感情)によって、コップが溢れやすい状態だったからかもしれません。


ストレスを溜め込まないように、小さな不満から小出しで表現・解消していくことが大事です。









怒りは大きくなる前に対処しよう。
怒りのコントロール法は?
コントロール方法はいくつかありますが、大きく分けて以下に分けられるでしょう。
- 『怒りの感情から離れる』
- 『自分が抱いている怒りを理解する』
- 『相手に適切な形で表現する』
上から順番に進めていくといいでしょう。下に行くほど時間はかかりますが、自己理解が深まり、根本的な怒りの源を解消したり、怒りを上手くコントロールしやすい体質になっていきます。
怒りの感情から離れる
『怒り』の強さによっては衝動性を伴うこともあり、冷静に考えるよりも先に行動に起こしてしまうことが多いです。
まずは怒りの状況から心と身体をいったん離して、気持ちを切り替えることで怒りとの距離を取ることが先決です。
よく有名な『最初の6秒を我慢しろ』というのは、この衝動性(怒りの感情のピークは6秒と言われているため)をやり過ごすために行われます。


でも6秒なんかで怒りが収まりません!余計にムカムカする時はどうしたらいいの!?







その場合は、トイレへ行ったり、外の空気を吸うなど、いったん怒りの状況から物理的に離れよう。怒りの対象が目の前にいるから、怒りを反芻してしまいやすくなるよ(反芻は怒りを増幅させます)
以下は、瞬発力のある衝動的な怒りを鎮める方法です。
| テンカウント法 | 怒りの対象から目をそらして、軽く息を吸ってから心の中でゆっくり1から10まで数える。 |
| ストップ・シンキング | 心の中で『ストップ!』と強く唱えたり、自分の腕を強くつねったり、目をギュッとつむるなどで、思考を強制的に停止させる。 |
| 呼吸法 | 目を閉じてゆっくり深呼吸をする。①鼻からゆっくり大きく息を(「1、2、3」と数えて)吸う。②少し止めて(軽く止めて「4」)、③口からゆっくり息を(「5、6、7、8、9、10」と数えて)吐く。 |
| 文章化 | 怒りを感じた出来事やその時の自分の考えや気持ちを思いつくままにどんどん書き殴る。書くことで怒りが静まって、自分を客観的に見ることができる。 |
| タイムアウト | 怒りの対象から物理的にいったん離れる。トイレに行ったり、外の空気を吸ったり、冷たい飲み物を買って飲んだりするだけでも効果あり(怒りで熱くなっているので、冷たい風や飲み物はクールダウンしやすい)。 |
| 寝る | 家や車の中であれば、いったん寝てしまうのも有効(眠ることで気持ちが整理されることは多い)。また心身が疲れていると怒りも増大しやすいので、心身の回復を優先してから、どうするといいか考えよう。 |







ポイントは、怒りの感情をクールダウンすることだよ。思考を止めたり、怒りの場面から離れたり。文章化することも頭の中にあるものをいったん外に出すという意味で、怒りの対象を頭から引き離していることになるんだ
過度な飲酒や自傷行為などの解消法について。
モヤモヤした苦しい感情(時にはイライラが混ざっている場合も多い)をシャットダウンする効果として使っている方もいらっしゃいます。ただし、長期的には耐性がついてしまって、不快な感情を解消するためにどんどんとエスカレートして、止めにくくなる特徴があります。
長期的にはあなたを傷つけてしまうことに繋がります。あなたの辛さを解消する適切な方法は他にもあるので、専門家に相談しましょう。
アンガーマネジメントでは、まずは「爆発」を防ぐことから始めましょう。
ここまで、怒りが生まれた瞬間に「爆発させない」ための緊急対処法(6秒ルールや呼吸法など)をご紹介しました。
これができるようになると、衝動的なトラブルは減るはずです。
しかし、これだけでは「イライラしやすさ」の根本解決にはなりません。
実は、あなたの怒りの根底にある大切な「価値観(コアビリーフ)」が隠れているからです。
次回は、あなたの怒りのタイプを整理し、「なぜ私はこんなに怒ってしまうのか?」という根本原因を一緒に見ていきましょう。










