
- 「また、言いたいことが言えなかった…」
- 「どうして、いつも自分ばかり我慢しているんだろう…」
- 「ついカッとなって、あとで気まずい雰囲気に…。もっと上手く伝えたかったのに」
相手を傷つけたくない、関係を壊したくないと思うあまり、うまくコミュニケーションが取れない時はありませんか?
置かれている立場や相手の状況などを考えて、自分の気持ちを押し殺してしまったり、逆に良かれと思って言った言葉がキツく映ってしまったり…。
私たちは日々のコミュニケーションの中で、小さな後悔やモヤモヤを抱えながら生きています。
あなたが人間関係において、なんだか疲れてしまうと感じているなら、あなたの「伝え方」ひとつでスッキリした気持ちに変えられるかもしれません。
この記事では、自分の気持ちにも誠実であり、相手と対等になって気持ちや意見を伝えるコミュニケーション方法である「アサーション」について、基本から具体的な実践方法まで解説していきます。
明日から使える”自分も相手も大切にしたコミュニケーション”のヒントが見つかることで、日々の人間関係のストレスが減り、よりあなたらしい生活になれることを願っています。
どうしてコミュニケーションが大事か?働いている人のストレス上位にある『人間関係』
| 心身のストレスに影響を与えるTOP5 | |
|---|---|
| 一般職 (正社員) | 管理職 |
| 仕事の量 | 業務量の増加と人手不足 |
| 仕事の失敗、責任の発生等 | 後任者の不在と部下育成の困難 |
| 対人関係(セクハラ・パワハラを含む。) | 部下マネジメントの複雑化・困難さ |
| 仕事の質 | 個人の学び・スキルアップ機会の不足と付加価値業務への未着手 |
| 会社の将来性 | 心身の健康問題とモチベーション低下 |
(参考文献)
- 厚生労働省(2025). 「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要:個人調査」
- パーソル総合研究所(2019). 「中間管理職の就業負担に関する定量調査 結果報告書」
- ラーニングイノベーション総合研究所(2023). 「管理職意識調査(部下へのフィードバック実態編)」
毎年厚生労働省が調査している中でも、『仕事の量』『仕事の質』『人間関係』は普遍的な悩みとして、常にランクインしています。
世代間ギャップなど昔から言われていた人間関係の難しさに加えて、近年は以下のトピックも出ています。
- ダイバーシティ
- 働き方改革
- 残業規制
- 人手不足
- ハラスメント
- メンタルヘルスによる離職の増加
など
職場風土が改善されていくとともに、コミュニケーションの難しさも増えているようです。
新型コロナウイルス蔓延以降に普及したテレワークでは、利便性と共にコミュニケーションの悩みも出てきました。

(参考文献)パーソル総合研究所(2025). 「第十回・テレワークに関する調査」(元データでは強調したい箇所に赤枠で囲っています。当コラムでは赤枠のみ削除して掲載しています)
カウンセリングでも、テレワークによってプライベートとの両立(育児や介護など)がしやすくなったり、苦手な人と物理的な距離を取れる安心感のメリットを得られた人もいます。
一方で、些細なことを気軽に聞けなくなったり、何か失敗した後に周りの反応やフォローが得られなくて不安感や孤独感を抱いたり、チームとの一体感を持てない人もいました。
厚生労働省の調査によると、『現在の自分の仕事や職業生活での不安、悩み、ストレスについて、相談できる相手』として、男性は『上司』(70.6%)、次いで『家族・友人』(59.1%)、女性は『家族・友人』(64.9%)、次いで『同僚』(58.9%)と多かったです。
| ストレスについて相談できる相手 (そのうちの実際に相談したことがある人) | |||
| 上司 | 同僚 | 家族・友人 | |
| 男性 | 70.6% (62.5%) | 62.5% (55.0%) | 66.2% (59.1%) |
| 女性 | 60.4% (55.7%) | 63.2% (58.9%) | 71.1% (64.9%) |
(参考文献)厚生労働省(2025). 「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要:個人調査」
ストレスと感じるのも人間関係ですが、困った時に相談を求めるのも身近な人間関係です。

自分自身を守るためにも、コミュニケーション力を高め、周りとの関係を良好に保つことは大事だね。
そのためにも今回お伝えするアサーションは、人間関係を良好に保つうえで大事なスキルです。
アサーションとは
アサーションとは、自分も相手も大切にしながら自己表現をする方法です。
必要上に相手や自分自身を傷つけることなく、誠実に気持ちを伝えることを目指していきます。
アサーション(assertion)は日本語訳にすると『主張』という表現になりますが、自分の意見を主張できればいいという概念ではありません。
相手にも自己表現する権利があるので、相手のことも大事にしながら、自分のことも大事にして自己表現することを大切にしています。
そのため、対等で相互的な関係を築くことに焦点をおいてコミュニケーションを取ることが、アサーションにおける望ましい対人関係です。
3つのコミュニケーションタイプ
ノンアサーティブ(非主張型)


I’m not OK, You’re OK.
アグレッシブ(攻撃型)


I’m OK, You’re not OK.
アサーティブ(バランス型)


I’m OK, You’re OK.
アサーションの理論では、コミュニケーションのタイプは3つに分かれます。
『私はOKでない、あなたはOK』(I’m not OK, You’re OK.)のコミュニケーションタイプ。
周囲との調和を重んじる日本人には多いと言われています。
周囲に合わせられても、自分の考えや不満、反対意見を伝えられずにストレスを抱え込みやすい。
表現する時も相手の反応を気にして、曖昧な言い方や自己弁護的な言い方になることも…。
そのため、相手は自分の本音を理解できず、優越感や罪悪感を持ったりすることもあります。
一方で、自分自身は劣等感を持ち、惨めな気持ちになりやすいです。
『私はOK、あなたはOKではない』(I’m OK, You’re not OK.)のコミュニケーションタイプ。
自分の意見や気持ちを優先し、時には勝ち負けにこだわり、一方的に押し通そうとしやすいです。
結果として、相手に自己表現を促さない、相手が敬遠して我慢しているという場合も多いです。
自分の意向は通っても、強引さゆえに周囲との軋轢が生まれ、あとで後悔することもあります。
相手にとっては、大切にされた感覚を持てず、あなたと距離を取ったり、表面的なことしか話さなくなります。
『私はOK、あなたもOK』(I’m OK, You’re OK.)のコミュニケーションタイプ。
相手の気持ちや立場への配慮を忘れずに、自分の気持ちも大事にしながら伝えられます。
自分の本当の気持ちに気づいて、それを大事にした上で相手へ「伝え」、相手の事情や考えも「聴き」つつ、状況に応じたふさわしい形で意見を率直に伝えられるため、生産的なコミュニケーションにも繋がります。
状況によって自分の意見を採用されなくても、相手と誠実に話し合った結果のため、引きずることは少なく、人間関係は安定しやすいです。
同じ状況下でも、この3つのパターンからその後の関係性が少しずつ変わっていきます。
たとえば、
あなたは自分の仕事が終わり、楽しみにしていた予定のために定時で帰ろうとしています。
そこへ、焦った様子の同僚が「ごめん!このデータ入力が急ぎなんだ。少しでいいから手伝ってくれない?」と頼んできました。
あなたはその頼りを引き受けると、1時間は帰れないことが分かっています。
| ノンアサーティブ | アグレッシブ | アサーティブ | |
|---|---|---|---|
| 言葉 (返事) | 「あ、ええと…(本当は断りたいけど)…はい、大丈夫です…やります…」 | 「はぁ?もう定時ですよ。いつも計画性がないから、毎回そんなことになるんですよ。無理です。自分でやってください」 | 「大変そうだね。力になりたい気持ちは山々なんだけど、本当に申し訳ない。今日はどうしても外せない大切な予定があって、手伝うことができないんだ。明日の朝一番なら協力できるけど、それでも間に合うかな?」 |
| 態度 | ・困ったように曖昧な笑顔を浮かべる。 ・相手に困っていることを察してほしくて、自信なさげに小声で答える。 | ・腕を組み、呆れたように大きなため息をつく。 ・語気が強く、相手を責めるような早口でまくしたてる。 | ・相手に正対し、相手の目を見て穏やかな表情で話す。 ・申し訳ないという気持ちと、断るという意思の両方が伝わるよう、落ち着いた誠実な態度で話す。 |
| 直後の自分の気持ち | ・その場の気まずい雰囲気や、相手をがっかりさせる状況を回避でき、一瞬だけホッとする。 ・「また断れなかった…」と自分を責め、楽しみにしていた予定もキャンセルしたため、「なんで自分ばかり…」と心の中で不満が募る。 | ・一瞬、言いたいことを言えてスッキリする。自分の予定を守れたことに安堵。 ・後から「少し言い過ぎたかな…」と罪悪感や後味の悪さを感じるかも。 | ・必要以上の罪悪感や自分を責めることもなく、「自分の気持ちも相手の状況も尊重しながら、誠実に伝えることができた」という自己肯定感を感じる。 ・その後の自分の予定も後味悪くなく大切にでき、晴れやかな気持ちで過ごせる。 |
| その後の 人間関係 | ・同僚は感謝するが、あなたが無理していることには気づかない。 ・『あの人は優しいから』と認識され、今後も同じような頼み事をされやすくなる。 ・不満やストレスが蓄積し、ある日突然、相手との関係を断ち切る。 | ・同僚は、人格まで否定されたように感じて傷つく。 ・「あの人はキツい人だ」と周囲から敬遠され、協力関係が築きにくくなる。結果的に孤立しやすくなる。 | ・同僚は、断られて一瞬がっかりするかもしれないが、あなたの誠実な断り方と代替案の提示もあり、そこまで不快には感じない。 ・「あの人は可能な時は協力してくれそうだし、無理な時は正直に伝えてくれるから話しやすい」と認識され、長期的にも信頼関係が深まる。 |
このようにその後の人間関係や展開が、バタフライエフェクトのように少しずつ変わっていくでしょう。



でも、どんな場面でもアサーティブでいこう!ってわけじゃないよ!
置かれている環境や相手によって、自分のコミュニケーションタイプを使い分けてもいいです。
その後の展開がコミュニケーションタイプによって変わっていくわけですので、あなたがどういう人間関係を望んでいるかに依ってくるでしょう。
そのため、自分の本当の気持ちに気づき、それを大切にすることが何よりも大切なのです。
【やってみよう】あなたはどのコミュニケーションタイプ?
こちらは外部リンクですが、回答にチェックするだけで、自分がどのコミュニケーションタイプに該当するかが分かります(ただし、リンク先で紹介されているタイプは4つです)。
特定非営利活動法人 アサーティブジャパンさんがホームページ上に公開している質問紙で、大分前に私も研修に参加させてもらったことがあります。


余談ですが、アサーションという概念は巷で広がっていて、いろいろな方が”アサーション”について説明されており、雑多にもなっています。
私たち心理職がアサーションを学ぶときは、日本でアサーションを広めた第一人者である平木典子先生を参考にすることが多いでしょう。
当初は平木先生が(株)日本・精神技術研究所にてアサーション・トレーニングを開始されたため、こちらの機関が伝統的なアサーションの考え方になりますので、ご参考までに。


どうして「No」と言えないのか?背景にある思い込み
では、なぜ私たちはアサーティブではなく、ノンアサーティブやアグレッシッブな伝え方を選んでしまうのでしょうか。その背景には、以下のような心理的な要因が隠されているかもしれません。
- 自己肯定感の低さ:
「自分の意見は呆れられるレベル」「どうせ言っても無駄だ」などの思い込みから、主張することを諦めてしまいます(ノンアサーティブ)。 - 他者からの否定的評価への恐れ:
「断ったら嫌われる」「わがままだと思われる」などの不安から、相手の要求を断れなくなります(ノンアサーティブ)。 - 過去の経験:
過去にイジメられたり、厳しくされた経験から「意見を言ったら、傷つけられる」「絶対に弱みを見せてはいけない」などの思いが強くなり、自分の気持ちを強引に押し通す行動へ繋がります(ノンアサーティブ・アグレッシブ)。 - 認知の歪み(思い込み):
「自分の気持ちより、場を丸く収めることが最優先だ」「社会人でNoと言うことは、やる気がないのと同じだ」といった、どんな場面でも極端な捉え方の癖を適用させると、アサーティブな行動を妨げます。
もし、「No」と言うことに苦労しているとしたら、あなたの中で『断る』ということに対して、以下のような捉え方の癖を持っているかもしれません。
| 捉え方の癖 | 現実的には… |
|---|---|
| もし断ったら、相手を傷つけることになるだろう。 | 相手の気持ちを察することで、相手を尊重した一言を織り交ぜながら「No」と言うことはできます。 |
| もし断ったら、相手と喧嘩になってしまうだろう。 | 断るということは、人間関係をおしまいにするということではありません。相手と喧嘩せずに断ることもできます。 |
| 私には「No」と言う権利がない。誰かが私に何かを要求してきた場合、必ず引き受けなければならない。 | 「No」と言う権利は誰にでもある人権です。他人の言いなりにならないために、「No」と言うことも大切です。 |
| 私が要求に応じたくないと思っていることを、相手が察するべきである。 | 自分の気持ちについて相手が察してくれるのを待つのではなく、自分のほうからはっきり伝えなければなりません。そのほうが好ましい、対等な関係です。 |
| もし断ったら、嫌な気分になるだろう。 | 確かに断るというのは、気分のよいものではありません。しかし、相手の気持ちを尊重しながら断れば、変な罪悪感を抱くことはないです。 |
| 「No」と言うのは、相手と敵対することである。 | たとえ考え方が違ったとしても、十分話し合って、妥協点を見つけることはできるかもしれません。 |
| 「No」と言うのは、利己的な態度である。 | 人生には、自分の身を守るために、「No」と言わなければならない時もあるでしょう。 |
| 「No」と言うためには、弁解して、自分を正当化しなければならない。 | たいていの場合は、ことさら弁解することなく、穏やかに「No」と言って受け取ってもらえることも多いです。 |
これらの背景を理解することは、自分を責めるためではありません。
「アサーティブになれないのは、自分の性格が悪いからだ」と考えるのではなく、その背景にある心の癖を知ることで、初めて引っかかりが取れ、具体的なアサーティブなコミュニケーションが可能になるのです。
誰しも自由に自己表現する権利を持っている
アサーション概念の根底として、自分にも相手にも持っている「自己表現の権利」という基本的人権を尊重するというのがあります。
感じたことや考えたことを言葉で表現する権利は誰にでもあり、他者の権利を侵害しない限りにおいて、その権利が保障されています。
大切なのは、その権利は自分だけではなく、自分以外の他者も同様の権利を有することを認めることが前提となる点です。
自分と他者の双方を尊重する経験の積み重ねによって、アサーティブな自己表現が身につきます。



厳しい環境下にいると見失いやすいけど、誰もがアサーションの権利を持っていて、基本的人権の一つだということを忘れないで!
- アサーション権Ⅰ:私たちは、誰もがアサーション権を持っている。
- アサーション権Ⅱ:私たちは、誰からも尊重され、大切にしてもらう権利がある。
- アサーション権Ⅲ:私たちは、自分の行動を決める権利がある。
- アサーション権Ⅳ:私たちは、誰でも過ちをし、それに責任を持つ権利がある。
- アサーション権Ⅴ:私たちには、支払いに見合ったものを得る権利がある。
- アサーション権Ⅵ:私たちには、自己主張をしない権利もある。
自分は「大切にされていい」「意見を伝えていい」という自尊感情と、相手は「自分を大切にしてくれる」「意見を聞いてくれる」という安心感や信頼感が相互に生まれることで、他者を尊重する気持ちに繋がっていくでしょう。
【実践編】アサーティブに表現しやすくなるステップ方法(DESC法)
アサーティブな伝え方の具体的なフレームワークとして、「DESC法」があります。
伝えたい内容を4つのステップに分解し、ステップを踏んだセリフを前もって組み立てておくと、スムーズにアサーティブな表現がしやすくなります。
- D(Describe):描写(客観的な状況)
客観的、具体的な状況や相手の言動を描写する。 - E(Express、Empathize):表現、共感(主観的な気持ち)
状況や相手の言動に対する自分の主観的な気持ちを表現したり、相手の気持ちに共感する。Iメッセージの活用。 - S(Specify):特定の具体的な提案(提案する)
相手に望む行動、妥協案、解決策など、特定の具体的な提案をする(妥協案、希望、解決策など)。 - C(Choose):選択(代案する)
相手からの肯定的、否定的な返答を想像し、それに対してどういう行動をするか選択肢を示す。
※伝える時は、非言語的な様子を一致させることも大事です。真剣に困っていることを相談したい時に、ニコニコした表情で伝えてしまうと、相手は『そこまで重たくない話なのかな』と非言語情報に引っ張られてしまうからです(メラビアンの法則)。
DESC法のC(選択)で、相手から否定的な返答が来た場合
DESC法で伝えたが、相手が応えてくれなかった…と諦めてしまい、また元のコミュニケーションタイプに戻る方もいらっしゃいます。
仕方がない時もあるのですが、相手がどうしてNoと言ったのか?相手の事情を具体的に確認していない方も多いです。
厳しい状況ほど、一回で完結するコミュニケーションはむしろ稀かもしれません。
相手にも『No』を言う権利はありますので、そこでも相手の事情を考慮した上で、自分の気持ちも大切にしながら、さらに折衷案をトライしてみることが大切です。



以下は練習問題だよ。DESC法を使って、自分だったらどう答えるか?練習してみよう。
(練習問題①)
私の部下にとても仕事が早い人がいます。
こちらが任せると何でも引き受けてくれますが、仕上がりが雑なので、そのつど指摘し、こちらが手直しすることが多々あります。
仕事先に出す見積書を作成する仕事を任せていますが、今回も計算や受注内容が間違えているなど、ミスを繰り返していました。
注意すると、その場では『すみません』と素直に謝りますが、メモを取ることもなく、次に間違えないようとする努力が見受けられません。
先ほど、また同じミスをしていたので、しっかりと注意しようと思います。
D(Describe):描写(客観的な状況)
ちょっと言いづらいけど、大切なことだから聞いてくれる?
お客様に出す見積書だけど、ミスが続いているよね。
E(Express、Empathize):表現、共感(主観的な気持ち)
私の説明が足りていなかったのは申し訳ないけど、修正に時間がかかって見積書の提出が遅れると、お客様にも迷惑をかけることになって困っているんだ。
それに、こんな些細なミスであなたの評価が下がるのはもったいないよね。
S(Specify):特定の具体的な提案(提案する)
もしわからないことがあったら、そのまま進めず、そのときに相談してくれないかな。
もう一度説明するから、メモを取ると次は間違えずに済むと思うんだ。
C(Choose):選択(代案する)
返答がYesの場合:がんばってね。期待しているから。
返答がNoの場合:そう。じゃあ、今間違えた状況を一度確認させてもらえるかな。
※いきなり次の代案を出すだけでなく、部下がNoと言う事情があるかもしれないので、相手に自己表現できるよう促すほうが丁寧でしょう。その上で、私もミスを間違いが続くのも困るので、妥協案をさらに提案する。
(練習問題②)
人手不足で全員が多忙な中、あなたは最近体調も悪化気味で、周りも体調が悪い状況下で働いています。
しかし、あと2週間乗り切れば、山場を越えられそうです。
そんな中、上司からさらに急ぎの仕事が依頼されました。
これ以上、負荷が増えると仕事上でミスを起こしてしまいそうです。
D(Describe):描写(客観的な状況)
この新しい〇〇の件ですね。お急ぎなのは承知しました。
ただ現在、私が抱えているタスクですが、本日締め切りの△△の資料作成と、明日午前中が期限となっている最優先事項の□□の準備がございます。
これに間に合わないと、お得意先の◇◇様に大変ご迷惑をお掛けしてしまいます。
E(Express、Empathize):表現、共感(主観的な気持ち)
みんなも忙しい中、こちらの新しい〇〇の件も重要でお急ぎだとは承知しております。
ただ正直に申し上げますと、私の現在の業務量でこのままお引き受けすると、既存のタスク、特に△△や□□の品質が落ちてしまったり、最悪の場合、納期に間に合わなくなる可能性を懸念しております。
S(Specify):特定の具体的な提案(提案する)
大変恐縮なのですが、 私が今抱えているタスクと、今回ご依頼いただいた新しいタスクを含めて、どの業務を最優先とすべきか、ご指示をいただくことは可能でしょうか。
もし新しいこのお仕事を最優先とする場合、明日午前中が期限の□□の準備を少し後ろ倒しにするなど、お得意先の◇◇様との調整が必要になるかと存じますので、その調整をお願いできないでしょうか。
C(Choose):選択(代案する)
返答がYesの場合:ありがとうございます。それではこちらに切り替えて専念します。
返答がNoの場合:それでは、△△や□□の品質が落ちた時や納期に間に合わなかった際のフォローをお願いします。もしくは、新しい〇〇の件は先輩Aさんも詳しいため、一緒に手伝ってもらえるよう調整お願いできますか。
※今回は無理して頑張らざるを得ない場合もあるでしょう。その時は、次回このような状況にならないよう上司に外部との調整をする際に、事前にメンバーの意見も聞いてほしいと伝えるのもいいかもしれません(ずっとノンアサーティブに我慢しないようにする)。
ただし、毎回DESC法で話すと畏まった人間関係になります。
DESC法を使う時は、
- 他に言うのが難しいことを話すとき
- 何と言ったらよいか迷うとき
- 話が複雑できちんと整理する必要があるとき
- 自分の気持ちや考えを明確にしてから話す必要があるとき
改まって伝えたい時により効果を発揮するでしょう。
Iメッセージを活用して、自分の気持ちの表現をマイルドにする
私たちは困っている気持ちを相手へ伝える際、つい感情的になったり、常識に当てはめたりして、キツイ言い方になってしまう時があります。
そのような時はメッセージの主語を「私は~」にして、文章を組み立て直すとマイルドな言い方になりやすいです(これを『Iメッセージ』と言います)。



(あなたは)なんで帰ってくるのがこんなに遅いの!



仕方ないだろう!こっちだって仕事の付き合いがあるんだよ!
この場合では、主語は「私は」でなく、「あなたは」となっています(これを『Youメッセージ』と言います)。
私たちは伝える時に主語を省略していることが多く、「あなたは」が主語になっている時は相手を否定・責めているような受け取られ方になりやすいです。
人間は攻撃されていると感じると、自己防衛として攻撃的に反論してしまいやすいものです。
こうなると些細なことをきっかけに喧嘩へと発展してしまうことがあります。
伝えたいメッセージとしては、相手に対する怒りももちろんあるでしょうが、怒りの背景に隠れているあなたの感情(心配していた、困っていた)を伝える方がマイルドになりやすいです。



帰ってくるのが遅かったから、私は心配していたの



帰ってくるのが遅かったから、私は○○に追われていて困っていたの
同じ内容を伝えるにしても、「私は○○してほしい」「私は○○○と感じている」のように、「私」を主語にして伝えることで、相手にとっては受け止めやすいメッセージとなります。
(練習問題)YouメッセージをIメッセージに言い換えてみよう
「ひどいことを言うのね」
「あなたの言葉で私は悲しかった」
「もっと協力してよ」
「〇〇をやってもらえると (私は)嬉しい・助かる」
「こんな時間まで何をしていたの?」
「連絡がないと心配するので、何時に戻るか言ってくれると (私は)嬉しい」
「約束を守れないのは、社会人として失格だと、私は思う」(見た目上はIメッセージだが、結局はYouメッセージで「あなたは社会人として失格だ」と言っている)
「約束を破られると(私は)悲しい」
コミュニケーションとは、自分の意図が相手に伝わることが大切です。
Iメッセージを活用することで、お互いに感情や考えを整理しやすくなり、異なる価値観を相互理解していくことに繋がるでしょう。
今回は、自分も相手も大切にするコミュニケーション方法である「アサーション」について、その考え方から具体的な実践方法までを解説してきました。
アサーションとは、あなたの気持ちを押し殺す「自己犠牲」でも、相手を言い負かす「自己中心」でもありません。
それは、あなたと相手との間に『誠実』で『対等』な関係を築き上げていく大事な関わり方です。
この記事があなたのコミュニケーションの悩みを解消してくれる一歩になれれば幸いです。
- 今回お伝えした『アサーション』は、自己表現が大事なアメリカの人権運動から始まっています。
その後、平木先生が日本文化に合うように開発してくださり、現在は日本人にとっても重要なコミュニケーションとして広まっています。 - もちろん、明日からすべてが完璧にできるわけではありません。
置かれている立場や相手によっては、言い淀んだり、感情的になったり、コミュニケーションの癖が出てしまうこともあるでしょう。
それは私も含めて、みんなそんなものだと思います。 - でも大切なのは、完璧を目指すことではなく、「自分も相手も大切にしよう」という姿勢を忘れずに、些細なやり取りから少しずつ実践を続けてみることです。
些細なことであっても、気持ちのよいやり取りができた成功体験が、あなたの自信となり、次の挑戦への勇気を与えてくれます。
その繰り返しの中で、いつの間にか人間関係のストレスが軽くなっている!となれていたら幸いです。 - もし、長年のコミュニケーションの癖に一人で向き合うのが難しいと感じたり、過去の経験がブレーキになってどうしても一歩が踏み出せないと感じたりした時には、私たち専門家の力を頼ることも考えてみてください。
カウンセリングでは、あなたが安心して自己表現の練習をし、アサーティブな自分へと変わっていくプロセスもサポートさせていただきます。
コミュニケーションは相手があって成り立つものですので、一人で全てを乗り越える必要はありません。いつでも私たちを練習相手や相談先として利用してみてくださいね。
今日紹介した内容と関連する記事(まとめ記事へリンク)には、以下が参考になると思いますので、よかったら読んでみて下さい。
①自分の考え方の癖との付き合い方を整理したい方はこちら(「認知行動療法とは?」)





