【前編 アサーション】人間関係を良好に保つコミュニケーション『アサーション』を臨床心理士が解説

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トップ画像。アサーション~お互いにとって気持ちのいい自己表現~

相手を傷つけたくない、関係を壊したくないと思うあまり、うまくコミュニケーションが取れない時はありませんか?

置かれている立場や相手の状況などを考えて、自分の気持ちを押し殺してしまったり、逆に良かれと思って言った言葉がキツく映ってしまったり…。

私たちは日々のコミュニケーションの中で、小さな後悔やモヤモヤを抱えながら生きています。

あなたが人間関係において、なんだか疲れてしまうと感じているなら、あなたの「伝え方」ひとつでスッキリした気持ちに変えられるかもしれません。

この記事は前編と後編の2回に分けて、自分の気持ちにも誠実であり、相手と対等になって気持ちや意見を伝えるコミュニケーション方法である「アサーション」について、基本から具体的な実践方法まで解説していきます。

明日から使える”自分も相手も大切にしたコミュニケーション”のヒントが見つかることで、日々の人間関係のストレスが減り、よりあなたらしい生活になれることを願っています。

目次
※管理職の順位は以下の参考文献を踏まえて作成したもので、順番は正確ではありません。ただし悩みの割合が大きいカテゴリーです。

(参考文献)

毎年厚生労働省が調査している中でも、『仕事の量』『仕事の質』『人間関係』は普遍的な悩みとして、常にランクインしています。

世代間ギャップなど昔から言われていた人間関係の難しさに加えて、近年は以下のトピックも出ています。

  • 人手不足

職場風土が改善されていくとともに、コミュニケーションの難しさも増えているようです。


新型コロナウイルス蔓延以降に普及したテレワークでは、利便性と共にコミュニケーションの悩みも出てきました。

パーソル総合研究所『第十回・テレワークに関する調査』に載っているテレワークに関する困りごとや不安感の調査結果の図

(参考文献)パーソル総合研究所(2025). 「第十回・テレワークに関する調査」(元データでは強調したい箇所に赤枠で囲っています。当コラムでは赤枠のみ削除して掲載しています)

カウンセリングでも、テレワークによってプライベートとの両立(育児や介護など)がしやすくなったり、苦手な人と物理的な距離を取れる安心感のメリットを得られた人もいます。

一方で、些細なことを気軽に聞けなくなったり、何か失敗した後に周りの反応やフォローが得られなくて不安感や孤独感を抱いたり、チームとの一体感を持てない人もいました。

厚生労働省の調査によると、『現在の自分の仕事や職業生活での不安、悩み、ストレスについて、相談できる相手』として、男性は『上司』(70.6%)、次いで『家族・友人』(59.1%)、女性は『家族・友人』(64.9%)、次いで『同僚』(58.9%)と多かったです。

(参考文献)厚生労働省(2025). 「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要:個人調査」

ストレスと感じるのも人間関係ですが、困った時に相談を求めるのも身近な人間関係です。

とげまる

自分自身を守るためにも、コミュニケーション力を高め、周りとの関係を良好に保つことは大事だね。

そのためにも今回お伝えするアサーションは、人間関係を良好に保つうえで大事なスキルです。

アサーションとは、自分も相手も大切にしながら自己表現をする方法です。

必要以上に相手や自分自身を傷つけることなく、誠実に気持ちを伝えることを目指していきます。

アサーション(assertion)は日本語訳にすると『主張』という表現になりますが、自分の意見を主張できればいいという概念ではありません。

相手にも自己表現する権利があるので、相手のことも大事にしながら、自分のことも大事にして自己表現することを大切にしています。

そのため、対等で相互的な関係を築くことに焦点をおいてコミュニケーションを取ることが、アサーションにおける望ましい対人関係です。

ノンアサーティブ(非主張型)

ノンアサーティブ(非主張的)を表したイラスト

I’m not OK, You’re OK.

アグレッシブ(攻撃型)

アグレッシブ(攻撃型)を表したイラスト

I’m OK, You’re not OK.

アサーティブ(バランス型)

アサーティブ(バランス型)を表したイラスト

I’m OK, You’re OK.

アサーションの理論では、コミュニケーションのタイプは3つに分かれます。

ノンアサーティブ(非主張型)

『私はOKでない、あなたはOK』(I’m not OK, You’re OK.)のコミュニケーションタイプ。

周囲との調和を重んじる日本人には多いと言われています。

周囲に合わせられても、自分の考えや不満、反対意見を伝えられずにストレスを抱え込みやすい。

表現する時も相手の反応を気にして、曖昧な言い方や自己弁護的な言い方になることも…。

そのため、相手は自分の本音を理解できず、優越感や罪悪感を持ったりすることもあります。

一方で、自分自身は劣等感を持ち、惨めな気持ちになりやすいです。

アグレッシブ(攻撃型)

『私はOK、あなたはOKではない』(I’m OK, You’re not OK.)のコミュニケーションタイプ。

自分の意見や気持ちを優先し、時には勝ち負けにこだわり、一方的に押し通そうとしやすいです。

結果として、相手に自己表現を促さない、相手が敬遠して我慢しているという場合も多いです。

自分の意向は通っても、強引さゆえに周囲との軋轢が生まれ、あとで後悔することもあります。

相手にとっては、大切にされた感覚を持てず、あなたと距離を取ったり、表面的なことしか話さなくなります。

アサーティブ(バランス型)

『私はOK、あなたもOK』(I’m OK, You’re OK.)のコミュニケーションタイプ。

相手の気持ちや立場への配慮を忘れずに、自分の気持ちも大事にしながら伝えられます。

自分の本当の気持ちに気づいて、それを大事にした上で相手へ「伝え」、相手の事情や考えも「聴き」つつ、状況に応じたふさわしい形で意見を率直に伝えられるため、生産的なコミュニケーションにも繋がります。

状況によって自分の意見を採用されなくても、相手と誠実に話し合った結果のため、引きずることは少なく、人間関係は安定しやすいです。

同じ状況下でも、この3つのパターンからその後の関係性が少しずつ変わっていきます。

スクロールできます

このようにその後の人間関係や展開が、バタフライエフェクトのように少しずつ変わっていくでしょう。

とげまる

でも、どんな場面でもアサーティブでいこう!ってわけじゃないよ!

置かれている環境や相手によって、自分のコミュニケーションタイプを使い分けてもいいです。

その後の展開がコミュニケーションタイプによって変わっていくわけですので、あなたがどういう人間関係を望んでいるかに依ってくるでしょう。

そのため、自分の本当の気持ちに気づき、それを大切にすることが何よりも大切なのです。

こちらは外部リンクですが、回答にチェックするだけで、自分がどのコミュニケーションタイプに該当するかが分かります(ただし、リンク先で紹介されているタイプは4つです)。

特定非営利活動法人 アサーティブジャパンさんがホームページ上に公開している質問紙で、大分前に私も研修に参加させてもらったことがあります。

アサーティブジャパン
自分のコミュニケーションタイプを知ろう|伝え方のヒントブック|アサーティブジャパン 自分も相手も大切にした話し方とは? 私たちはアサーティブトレーニングを全国各地で実施しているNPO法人です。基礎講座からトレーナー養成講座まで幅広く学べます。

余談ですが、アサーションという概念は巷で広がっていて、いろいろな方が”アサーション”について説明されており、雑多にもなっています。

私たち心理職がアサーションを学ぶときは、日本でアサーションを広めた第一人者である平木典子先生を参考にすることが多いでしょう。

当初は平木先生が(株)日本・精神技術研究所にてアサーション・トレーニングを開始されたため、こちらの機関が伝統的なアサーションの考え方になりますので、ご参考までに。

株式会社 日本・精神技術研究所(...
アサーション〈自己表現〉トレーニング | 株式会社 日本・精神技術研究所(日精研) | 心理アセスメント・... アサーション<自己表現>トレーニングとは、自分も相手も大切にした自己表現を身につけていくトレーニングです。相手も自分も大切にするさわやかなコミュニケーションを実...

では、なぜ私たちはアサーティブではなく、ノンアサーティブやアグレッシブな伝え方を選んでしまうのでしょうか。その背景には、以下のような心理的な要因が隠されているかもしれません。

  • 自己肯定感の低さ
    「自分の意見は呆れられるレベル」「どうせ言っても無駄だ」などの思い込みから、主張することを諦めてしまいます(ノンアサーティブ)。
  • 他者からの否定的評価への恐れ
    「断ったら嫌われる」「わがままだと思われる」などの不安から、相手の要求を断れなくなります(ノンアサーティブ)。
  • 過去の経験
    過去にイジメられたり、厳しくされた経験から「意見を言ったら、傷つけられる」「絶対に弱みを見せてはいけない」などの思いが強くなり、自分の気持ちを強引に押し通す行動へ繋がります(ノンアサーティブ・アグレッシブ)。
  • 認知の歪み(思い込み)
    「自分の気持ちより、場を丸く収めることが最優先だ」「社会人でNoと言うことは、やる気がないのと同じだ」といった、どんな場面でも極端な捉え方の癖を適用させると、アサーティブな行動を妨げます。

もし、「No」と言うことに苦労しているとしたら、あなたの中で『断る』ということに対して、以下のような捉え方の癖を持っているかもしれません。

これらの背景を理解することは、自分を責めるためではありません。

「アサーティブになれないのは、自分の性格が悪いからだ」と考えるのではなく、その背景にある心の癖を知ることで、初めて引っかかりが取れ、具体的なアサーティブなコミュニケーションが可能になるのです。

アサーション概念の根底として、自分にも相手にも持っている「自己表現の権利」という基本的人権を尊重するというのがあります。

感じたことや考えたことを言葉で表現する権利は誰にでもあり、他者の権利を侵害しない限りにおいて、その権利が保障されています。

大切なのは、その権利は自分だけではなく、自分以外の他者も同様の権利を有することを認めることが前提となる点です。

自分と他者の双方を尊重する経験の積み重ねによって、アサーティブな自己表現が身につきます。

とげまる

厳しい環境下にいると見失いやすいけど、誰もがアサーションの権利を持っていて、基本的人権の一つだということを忘れないで!

自分は「大切にされていい」「意見を伝えていい」という自尊感情と、相手は「自分を大切にしてくれる」「意見を聞いてくれる」という安心感や信頼感が相互に生まれることで、他者を尊重する気持ちに繋がっていくでしょう。


アサーション前編いかがだったでしょうか?

ここまで、コミュニケーションの3つのタイプや、私たちが持っている「アサーション権(自己表現の権利)」についてお話ししました。

「私にも、断る権利があったんだ!」
「相手を傷つけずに、自分も守っていいんだ!」

そう思えるだけで、心の重荷は少し軽くなることも十分あります。

しかし、いざ実践しようとすると、「頭ではわかってるけど、具体的な言葉が出てこない…」と悩みますよね。

アサーションには「誰でも・感情的にならずに・うまく伝わる型(フレームワーク)」も存在します。

次回の後編は、その具体的な「型(DESC法)」を使って、今すぐにでも使えるセリフの作り方を徹底解説しますので、よかったら続きも見てくださいね。

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この記事を書いた人

とげまるのアバター とげまる 臨床心理士・公認心理師

臨床経験11年(2025年時点)
小中高のスクールカウンセリング、外部EAPにて企業のメンタルヘルス支援を経て、現在は精神科・心療内科クリニックと企業社内カウンセラーとして勤務。
専門領域:認知行動療法、人間性心理学、復職支援、心理教育
趣味:youtube鑑賞、食べ歩き

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