

「しっかり休んでくださいね」
カウンセリングでそうお伝えすると、しばしば困ったような、あるいは申し訳なさそうな顔をされることがあります。


先生、休み方がわからないんです


横になっていても、頭の中は仕事のことで忙しくて…
なるほど、確かにそうです。
私たちは学校で『因数分解』や『くらむぼん』は教わりましたが、正しい休み方を教わった記憶がありません
実は、上手に休むことは一つの技術です。
今日は、メンタルヘルスの専門家としての視点から、休息を取るコツを紐解いてみましょう。
1.そもそも「疲れ」って?
疲れ、疲労を感じるとき、体内ではどんなことが起こっているのでしょうか。
現在の知見では、エネルギーを使う際に生じる「活性酸素」が脳や体にダメージを与え、自律神経がオーバーヒートしている状態と考えられています。
つまり疲れとは、単なるエネルギー切れではなく、
- 「これ以上活動すると危ないですよ」
- 「細胞が壊れてしまいますよ」
という脳からの警報(アラーム)なのです。
このアラームを無視し続けると、朝起き上がれなくなったり、上手く眠れなくなったり、やる気や集中力が出なくなってしまいます。
しかし、人間というのは厄介な生き物で、このアラームの音量を勝手に下げたり、「気のせいだ」と言い聞かせたりするのが非常に得意です。
特に、責任感の強い人ほど、「こんなところで休んでいられない…」と動き続けてしまいます。
疲れを放置した結果、「燃え尽き(バーンアウト)」や「適応障害」へと発展してしまうリスクもあります。
- “疲れ”とは、実際に体の中に物質として存在している
- 人間は“疲れ”というアラームを無視してしまうことがある
- ずっと無視をし続けると燃え尽きや病気になってしまう
2.疲れの3形態
実は、疲れは大きく分けて「身体」、「頭」、「こころ」の3種類に分類できます。
スマホに例えるなら
- バッテリー切れ(身体)
- アプリの立ち上げすぎ(頭)
- 通信エラー(こころ)
といった違いです。
スマホの不具合の治し方が異なるように、人間もそれぞれの疲れの種類によって対処法が異なります。
種類別の疲れの正体と、休息方法について解説をしていきます。
2-1.身体の疲れ
これは疲れの中でも最も分かりやすい種類と言えます。
肉体的な消耗です。
- 力仕事をしたことで筋肉痛になる
- 一日中立ち続けた、歩き続けたために足が棒のようになる
- パソコンを見続けて目の奥が痛くなる
…etc


体の疲れに対する休息は「安静」です
睡眠、食事、入浴など、体を労りケアすることで疲れが解消されます。
横になるだけでも、体への負担は減ります。
この時、「何か生産的なことをしなくては」という思考が湧いてきたら、それは後述する「頭の疲れ」の症状ですので、一旦脇に置いておきましょう。
逆に、一日同じ姿勢を取り続けたことによる疲れは、軽い運動やストレッチなどで、身体をほぐすことも効果的です。
体の疲れは、体を通して直接的に対応します。
- 体は使った分だけ消耗する
- 体の疲れは安静にしたり、軽く動かすことで癒す
2-2.頭の疲れ
現代人に多いのがこの疲れかもしれませんね。
マルチタスクや次から次に入ってくる情報で、脳みそがオーバーヒートしている状態です。


頭の疲れに対する休息は「削減」です
単にぼーっとしようとするよりも、情報入力を意図的に減らすことで疲れが解消されます。
- あえてスマホを持たずに散歩する
- 単純な作業(皿洗いや靴磨きなど)に没頭する
といった、動的な休息が脳の冷却には効果的です。
頭を空っぽにして楽しめるコメディ映画やお笑いなどのバラエティを楽しむことも、頭の疲れを癒してくれます。
頭の疲れは、頭に入る情報を量の面から減らす、種類を絞り込むことで対応します。
- 頭は情報過多、オーバーヒートによって疲れる
- 頭の疲れ「何もしない」よりも、情報を絞った「何かをする」ことで癒す
2-3.こころの疲れ
これは、感情によるすり減りです。
対人関係での気遣いや、自分を責める気持ちが続くと、こころが摩耗していきます。


こころの疲れに対する休息は、「解放」です
誰の期待にも応えなくていい時間を持つことで、疲れが解消されます。
自分自身への期待も含めて、“望ましい自分”を行うのではなく、“そのままの自分”でいる時間を設けることで癒されます。
我々は、知らず知らずの内に「良い親」、「有能な社員」、「物分かりの良い大人」…
こうした仮面をつけて日々過ごしています。
“こうあるべき”という外側の声が大きくなりすぎて、自分の内側の小さな声(「悲しい」「嫌だ」「休みたい」)が聞こえなくなってしまうことがあります。
こころを休ませるとは、外側に向けていたアンテナを一度折り畳み、自分自身の内側に「大丈夫そう?」と声をかけてあげる作業です。
- 意味のない独り言をつぶやく
- 誰にも見せない日記を書く
- 信頼できる専門家の前で「良い人」の仮面を外す
といった、自分の内面を表現したり、距離を取ったりすることが効果的です。
こころを休ませるとは、外側に向けていたアンテナを一度折り畳み、自分自身のこころに解放することが重要です。
こころの疲れは、役割から自分を解放することで対応します。
- こころは動かし続けるとすり減ってしまう
- 知らず知らずの内に役割を演じている
- 自分自身でいる時間を設けることが癒しになる
3.休息の極意
最後に…
休息の最大のコツは、「しないこと」に「許可」を出すことです。
多くの人は、休んでいる間に「時間を無駄にしている」という罪悪感を抱きます。
しかし、プロのスポーツ選手が練習と同じくらい休息を重視するように、私たちにとっても休息は「次の活動のための準備」ではなく、「生きることそのものの一部」です。
まずは5分だけ、プロの『休み屋』になったつもりで、体、頭、こころの疲れに対して適応した休息を取ってみましょう。
- 体の疲れには「安静」を
- 頭の疲れには「削減」を
- こころの疲れには「解放」を
完璧に休もうとしなくて大丈夫です!
その休もうとする試行錯誤そのものが、自分を大切にする第一歩ですから。
そして、この試行錯誤も一人でしなくて大丈夫です。
我々が一緒に、あなたにとっての休息を探し、実現することをお手伝いします。

