

リラックスすることが大事。
ですが、「よし、リラックスするぞ!」と決意した瞬間に、肩にグッと力が入ります。
私たちは、リラックスというものを何か「自動的に訪れるご褒美」のように捉えてはいないでしょうか。



仕事が終われば、お酒を飲めば、
スマホを眺めてダラダラすれば、
疲れは自然と溶けて消えてくれるはず……。
しかし、現実はそうは単純には動いてくれません。
私たちの脳は、体は横たわっている間も「今日言われたあの一言」を反芻し、明日の予定をシミュレーションし、フル稼働を続けています。
心理学の視点では、リラックスとは、決して「何もしないこと」ではありません。
リラックスとは、能動的に自分を整える「攻めの技術」なのです。
そして、自分自身でリラックス状態を作り出す技術を“リラクセーション”と呼んでいます。
今回は、巷に溢れるリラックスの誤解を解き明かし、臨床現場でも重宝される「心と身体の調律法」を皆さんに共有したいと思います。
1.その「リラックス」、実は脳を疲れさせていませんか?
まず、私たちが陥りがちな「リラックスの罠」についてお話ししましょう。
よくある誤解の筆頭は、「娯楽(刺激)」と「休息」の混同です。
- 仕事帰りに冷えたビールを流し込む
- SNSで刺激的な動画を次々と眺める
- 深夜までゲームに没頭する
これらは確かに楽しい「娯楽」ですが、神経学的に見れば、脳は興奮状態にあります。
ドーパミンという物質が脳内で出て、一時的に疲れを忘れているだけで、脳はちっとも休まっていないのです。
もう一つの罠は、「思考のアイドリング(反芻思考)」です。
身体はソファに預けていても、



「あの時、ああ言えばよかった」
「明日のプレゼンが不安だ」
頭の中でこのような思考がループしていれば、それは精神世界で残業をしているのと変わりありません。
会社とは違い、自分の精神世界とは物理的に距離を取ることができません。



我々は皆、自分精神株式会社の社長なのです。
ブラック会社にするのか、ホワイト優良企業にするのか、自分で決めることができます。
リラクセーションとは、単に「入力を止める」ことではなく、高ぶった神経系のスイッチを「意図的に切り替える」作業なのです。
- 娯楽は楽しいけど、リラックスから遠のく場合もある
- 体は休めていても、頭が働き続けていたら休めていないのと同じ
2.「身体」から「心」へ、裏口から入る
「不安を消そう」、「落ち着こう」と念じるだけで心が静まるなら、私たちは苦労しません。
心理学の世界では、「心(感情)を変えるのは難しいが、行動なら比較的コントロールが容易」という考えが一般的です。
私たちの自律神経は、緊張の「交感神経」とリラックスの「副交感神経」がシーソーのように働いています。
このシーソーを、自分の意志で副交感神経に傾けるための具体的な方法を二つ、ご紹介します。
- ①力を抜くには、まず力を入れるところから「漸進的筋弛緩法」
-
臨床現場で最も信頼されている技法の一つに「漸進的筋弛緩法(ぜんしんてききんしかんほう)」があります。
やり方はシンプルです。- 両手、両肩、足など、特定の部位に「グーッ」と力を込めます。
- 十分に力感、筋肉や皮の張り、徐々に熱を持つ感覚を味わってください。
- その後、一気に「脱力」します(10〜20秒間)。
- ふわっとした感覚や、サーっと血液が流れる感触に意識を向けてみてください。
「力を抜こう」と思っても抜けないのが人間です。
であれば、一度極限まで緊張させてから放り出す。
この時、じわ〜っと筋肉が緩んでいく「感覚」にただ注目してください。
この「緩んだ感覚を味わうこと」こそが、脳にリラックスの信号を送る最短ルートになります。 - ②呼吸の主役は「吐くこと」にある。「呼吸法」
-
「深呼吸をしましょう」と言うと、多くの人が一生懸命に空気を吸い込もうとします。
しかし、リラクセーションにおいて重要なのは、圧倒的に「吐くこと」です。
生理学的に、息を吸うときは交感神経が、息を吐くときは副交感神経が優位になります。
同じ仕組みで、息を吸うときには脈拍と血圧が上がり、息を吐くときには脈拍と血圧が上がります。
神経がどうのこうのというより、こちらの方が分かりやすいですね。
心太

試しに、いーっぱい息を吸い込みながら、鼓動に意識を向けてみてください。
ドクドク言い出したでしょう?
なので、「吸う:吐く」の比率を「1:2」にするイメージで、細く長く吐き出してみてください。
自然と鼓動が収まり、体の感覚が鋭い人は眉間のあたりがスーッと冷える感じがします。
肺の中を空っぽにする勢いで吐き切れば、吸う息は勝手に入ってきます。
これら二つの方法は、我々の体に備わった基本機能に訴えかける方法です。
難しいテクニックは不要で、知識だけでも十分に効果が見込める、そんなお得な方法ですよ。
- リラックスは心より体から作る
- 力は抜く前に、力を入れることで簡単になる
- 息は吸うよりも、吐くときの方が幸せになれる
最後に:リラックスは自分への「マナー」である
「忙しくてリラックスする時間なんてない」
そう仰る方にこそ、私はお伝えしたいのです。
私たち人間も、全く同じです。
バイオリンなんてそんなお上品な…
そう思った方はパンツのゴムでもOKです。
パッツンパッツンに張り詰め続ければ、どんなものでも痛んでびろんびろんになってしまいます。
リラクセーションは、怠慢でも、自分への甘やかしでもありません。
明日、大切な人の前で笑顔でいるために。
あるいは、自分の仕事に誇りを持って向き合うために。
自分をメンテナンスする、自分自身への最低限の「マナー」なのです。
まずは今夜、寝る前の数分だけで構いません。
「よし、今から自分を調律するぞ」という攻めの姿勢で、筋肉を一度ギュッと固め、そしてストンと落としてみてください。
その瞬間、あなたの心に小さな「空白」が生まれるはずです。
リラックスの仕方についてご興味を持たれ方、深めてみたいと思われた方は、ぜひ私たちのカウンセリングを利用してみてくださいね。

