

日々の生活の中で、私たちはさまざまな出来事に遭遇し、そのたびに落ち込んだり、怒ったり、不安になったりします。
もしあなたが今、そうした「終わりのないネガティブな感情」の渦中にいるのなら、それは起きた出来事そのもののせいだけでなく、あなたの頭の中で無意識に繰り広げられている「心のつぶやき」が影響しているのかもしれません。
認知行動療法(CBT)では、この無意識のつぶやきを「自動思考(じどうしこう)」と呼びます。
今回は、私たちの感情を大きく揺さぶる自動思考のメカニズムと、それに気づくための具体的なステップを解説します。
1.苦しさの前に隠された「自動的なつぶやき」
私たちは一般的に、「嫌な出来事があったから、落ち込んだ」というように、出来事が感情を直接生み出していると考えがちです。
しかしCBTの理論モデルでは、出来事と感情の間に、必ず「物事の捉え方(認知)」が挟まっていると考えます。
出来事が起きたその瞬間に、頭の中にパッと条件反射のように浮かぶ「自動的なつぶやき」やイメージこそが自動思考です。
例えば、
「友人にメールを送ったけれど、返信がこない」という出来事に対しても、頭の中のつぶやきによって生まれる感情は全く異なります。
- 「何か怒らせることを言ったかもしれない」とつぶやけば、不安や恐怖が生まれます。
- 「私との関係なんてどうでもいいんだ」とつぶやけば、悲しみや孤独が生まれます。
- 「忙しいのかな、後でくるだろう」とつぶやけば、穏やかな気持ちでいられます。
このように、私たちは出来事そのものに傷ついているのではなく、自分の頭の中に浮かんだ「自動思考」によって感情で左右されています。
- 出来事と感情の間には、必ず「自動的なつぶやき(自動思考)」が存在する
- 同じ出来事であっても、浮かぶ自動思考によって生まれる感情は大きく変わる
- ネガティブな感情の正体は、出来事そのものではなく「自分の捉え方」である場合が多い
2.なぜ自動思考は「事実」に見えてしまうのか
自動思考の厄介なところは、それがあまりにも一瞬で、無意識のうちに行われるため、私たちはそれを「疑いようのない客観的な事実」だと思い込んでしまう点です。
人間の脳は、忙しい日常の情報処理をスムーズに行うために、物事をパターン化して捉えるクセを持っています。
しかし、心が弱っているときや、過去の傷つき体験がある場合、このパターンが極端にネガティブな方向へと偏りやすくなります。
- 「相手の表情が曇った」=「自分が嫌われている」
- 「仕事で一つミスをした」=「自分は無能だ」
このように、十分な証拠がないまま結論に飛びついてしまうのです。
頭の中のつぶやきをそのまま事実として受け入れてしまうため、心は常に危険に晒されているような緊張状態が続いてしまいます。
- 自動思考は一瞬で浮かぶため、脳の中で「事実」と勘違いされやすい
- 心が疲れているときは、自動思考が極端にネガティブになりやすい
- 証拠がないまま「最悪の結論」へ飛びつくクセが、心の緊張を生み出す
3.「心のつぶやき」をキャッチする最初のステップ
自動思考に振り回されないようにするための効果的な方法は、思考を「客観的に眺める」ことです。
そのためには、頭の中だけで処理せず、文字にして「見える化」することが不可欠です。
まずは、胸がモヤモヤしたり、急に不安や怒りが湧いてきたりした瞬間を捉えてみましょう。
感情が動いた時が、自動思考を探すサインです。
立ち止まって、自分にこう問いかけてみてください。
「今、感情が動く直前に、頭の中でどんな言葉や映像がよぎっただろう?」
そして、それをスマートフォンのメモ帳でも、手元のノートでも構いません。
ありのままの言葉を書き出してみましょう。
きれいに整った文章にする必要はありません。
「あいつは私を馬鹿にしている」「もう全部めちゃくちゃだ」など、浮かんだ生の言葉をそのまま書き出します。
頭の外に出すことで、初めて私たちは「自分は今、こういう捉え方で世界を見て、苦しくなっていたんだな」と気づくことができるようになります。
- ネガティブな感情が湧いた瞬間こそが、自動思考を捕まえるチャンスである
- 「感情が動く直前に頭をよぎった言葉」を、ありのままノートに書き出す
- 文字にして脳の外に出すことで、自分の考えを客観的に眺めるスペースが生まれる
4.最後に
自動思考に気づくことは、これまでの自分の生き方のクセを知ることでもあります。
最初はうまく言葉にできなくても、「今、何かネガティブなつぶやきがあったな」と気づくだけで、感情の暴走に小さなブレーキをかけることができます。
まずは、自分の心の中でささやかれている「声」を、ジャッジせずにただ聴いてあげることから始めてみませんか。
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一緒に自動思考をキャッチする練習をすることもできますので、お気軽にご利用してみてくださいね。
