

- 何かミスをすると、もう取り返しがつかないと感じてしまう
- 相手の表情が少し曇ると、自分が嫌われているのではないかと不安になる
- 一度ネガティブな気持ちになると、底なし沼のようにはまって抜け出せない
日々の生活の中で、私たちはさまざまな出来事に遭遇し、そのたびに心が揺れ動きます。
もしあなたが、不安や落ち込んだとき終わりのないループに入ってしまうなら、それは起きた出来事そのもののせいだけでなく、頭の中で無意識に繰り広げられている「思考のクセ」が影響しているのかもしれません。
私たちの「物事の捉え方(認知)」に焦点を当て、そのバランスを整えることで心の痛みを和らげていく手法を、認知的アプローチを呼びます。
今回は認知行動療法(以下CBT)の中でも、認知的アプローチにおける代表的な方法と、そのメカニズムについて詳しく解説していきます。
1.思考の出発点に気づく「自動思考のキャッチ」
CBTにおいて最も基本であり、すべての土台となるのが「自動思考(じどうしこう)」に気づくことです。
例えば、
「上司が難しい顔をして歩いてきた」という出来事に対して、
ある人は「何か怒られるかもしれない」と思い、
別の人は「体調が悪いのかな」と思うかもしれません。
「怒られるかも」と捉えやすい方は、心に強い緊張や不安が生まれます。
しかし、このつぶやきはあまりにも一瞬で、無意識のうちに行われるため、私たちはそれを「客観的な事実」だと思い込んでしまいがちです。
まずは、「悲しい」「不安だ」などの気持ちの良くない感情が動いた瞬間に立ち止まり、「今、頭の中でどんなつぶやきがあっただろう?」とノートに書き出してみる。
これが、認知的アプローチの代表的な方法です。
日記のように長い文章を書く必要はありません。
何か出来事が起きたときの、頭の中でふと浮かぶ一言二言こそが自動思考です。
- 感情が動いた瞬間の「脳のつぶやき」に注目する
- 自動思考は無意識のうちに浮かぶため、事実と混同しやすい
- 頭の中の言葉をノートやスマホに書き出すことから始める
2.客観的な事実を並べる「認知再構成法(コラム法)」
自動思考をキャッチすることに慣れたら、次に行うのが認知再構成法(にんちさいこうせいほう)、通称「コラム法」と呼ばれるワークです。
これは、自分の考えを裁判の席に載せるように、客観的に検証していく作業で、最も有名なアプローチの一つです。



感情が大きく揺さぶられているとき、私たちの視野は非常に狭くなっちゃうものです
そこで、紙に以下の要素を書き出し、思考を整理していきます。
- 状況
-
いつ、どこで、何があったか(※事実のみを客観的に)。
- 自動思考
-
そのとき頭に浮かんだネガティブな考えやイメージ
- 根拠
-
ネガティブな考えが「正しい」と言える事実や証拠
- 反証
-
ネガティブな考えと「矛盾する」事実や、別の可能性を示す証拠
ここでのポイントは、無理やりポジティブ思考に変えることではありません!
「自分の考えを支持する証拠」と「そうではない証拠」の両方を冷静に並べることです。
例えば、「自分は仕事がまったくできない」という自動思考が思い浮かんだとしましょう。
その場合、以下のようにコラム法を活用します。
状況:昨日上司に「頑張れよ!」と言われた
自動思考:自分は仕事がまったくできていないから頑張れと言われた
根拠:先週ミスをして怒られたことがあった、同期がアサインされたプロジェクトに自分は参加していない



ここまでだと、自動思考がますます確信を深めていきますね。
もう一息です!
反証:今週、別のタスクはスケジュール通りに終わらせた、先月同僚にお礼を言われた
このように自動思考に対して、客観的な事実に基づいて反論を行います。
そうすると、「できない部分もあるが、すべてがダメなわけではない」という、現実的で柔軟な新しい考え(適応的思考)を導き出しやすくなります。
無根拠にポジティブになるのを目指すのではなく、重要なのは客観的な視点、認知を自在に操れるようになることなのです。
- ネガティブな気持ちになっているとき、視野(認知)は狭くなりがち
- ポジティブ思考ではなく、客観的な「証拠(根拠と反証)」を並べることが重要
- 視野を広げることで、現実的で柔軟な新しい捉え方(適応的思考)を考えやすい
3.思考の歪みを分類する「認知のクセの把握」
認知再構成法を進めていくと、自分が陥りがちな「思考の偏り(認知の歪み)」のパターンが見えてきます。
代表的なクセには以下のようなものがあります。
- 0-100思考(白黒思考)
-
物事を「完璧か、さもなくば完全な失敗か」の二択で捉えてしまう。
- 破局視(過大評価・過小評価)
-
失敗や最悪の事態を過剰に大きく見積もり、自分の対処能力を小さく見積もってしまう。
- 心のフィルター(選択的抽出)
-
9個のうまくいったことには目を向けず、1個の失敗だけに執着して、全体が悪いように感じてしまう。
- 結論への飛躍(心の読みすぎ)
-
確かな証拠がないのに「相手は自分を見下している」などと思い込んでしまう。
ここに挙げたクセはほんの一部で、様々な種類があります。
思考のクセは、誰しもが持っているものです。
大切なのは、クセを無くすことではなく、「あ、今またいつもの0-100思考が出ているな」と自分で気づけるようになることです。
気づくだけでも、その思考に振り回される度合いはぐっと減っていきます。
- 「思考の偏り(認知の歪み)」は誰しもが持っている
- クセの「いつものパターンが出た」と自覚することが大切
- 自分のクセに気づくことで、感情の暴走にブレーキをかけやすくなる
4.最後に
認知行動療法の認知的アプローチは、あなたの考え方を「正しい・間違い」で裁くものではありません。
また、「嫌なことを無理に忘れようとする」ものでもありません。
頭の中だけで考えていると、ネガティブな思考は渦を巻いて強くなってしまいます。
考えないようにしよう!とすることも実はネガティブ思考を強くしてしまいます。
大事なのは、今までのパターンとは違う、新しいパターンで“考える”ことです。
まずは、小さくメモを取ることから、自分の心との新しい対話を始めてみましょう。
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私たちのカウンセリングをぜひ活用してください。
一緒に今までのパターンとは違う、もう少し生きやすくなる捉え方の選択肢を見つけるお手伝いをさせてくださいね。

